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「回想十年」吉田 茂|憲法改正、日米安保条約締結の舞台裏を書いた本

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吉田茂が語る激動の10年! 回想録「回想十年」を読み解く

「回想十年」は、1957年(昭和32年)に刊行された、吉田茂による回顧録です。

吉田茂は、本書の中で、敗戦後の荒廃から復興に向かう日本において、首相として、どのように考え、行動したのかを赤裸々に綴っています。本書は単なる回顧録ではなく、激動の時代を生きた吉田茂の政治哲学、歴史観、そして未来への展望が凝縮された一冊と言えるでしょう。

若き外交官、巨匠に翻弄される?

吉田茂は、若き外交官時代、パリ講和会議に牧野全権の随員として参加しました。この時、首席全権であった西園寺公望の飄々とした態度に翻弄されたエピソードが印象的です。西園寺は、会議の席上ではほとんど発言せず、「アイボリー・マスク」(象牙の面)と揶揄されることもあったそうです。しかし、吉田は、会議の場で雄弁をふるうことだけが外交ではないこと、旧友クレマンソー議長と懇意であった西園寺の存在自体が、日本の立場を高め、会議を有利に進める機会をもたらしたことを高く評価しています。

「バカヤロー」だけではない! 組閣の裏側、吉田の真意とは?

吉田は、首相在任中、「バカヤロー解散」をはじめ、3度もの衆議院解散を断行しました。特に、1953年(昭和28年)3月の解散は、社会党議員への答弁をきっかけに、党内から30数名もの造反議員が出たことによるもので、政局運営の難しさが窺えます。吉田は、政党政治の黎明期において、政権維持のためには、時に強断な決断も必要であったと述懐しています。

「戦争放棄」吉田の真意とは? 憲法改正、舞台裏のせめぎ合い

吉田は、1946年(昭和21年)5月3日に公布された日本国憲法の制定にも深く関わりました。特に、憲法9条の「戦争放棄」条項については、その発案者が誰なのか、様々な議論がなされてきました。吉田は、GHQ側から憲法改正案の作成を急ぐように要請されていたこと、早期の主権回復と進駐軍の撤退を実現するためには、連合国に対して再軍備の放棄と徹底的な民主化の完成という安心感を与える必要があったことを明かしています。

まとめ

「回想十年」は、歴史の転換点に立ち会った吉田の貴重な証言であると同時に、現代社会にも通じる普遍的なメッセージを含んでいます。例えば、吉田は、戦後日本の外交のあり方について、経済的にも技術的にも歴史的にも関係の深い米英両国との関係を重視すべきだと主張しています。これは、今日の日本を取り巻く国際情勢を考える上でも示唆に富む視点と言えるでしょう。

「回想十年」は、歴史に興味を持つ方はもちろん、政治や外交に関心のある方、そして激動の時代を生きた吉田茂という人物を知りたい方にもおすすめの一冊です。

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本の目次と要約

関連リンク

国立国会図書館:吉田茂|近代日本人の肖像

NHKアーカイブス:吉田茂|人物

大磯町ホームページ:吉田茂と旧吉田茂邸について