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「山本太郎 闘いの原点」山本太郎|メロリンQから国会議員への軌跡を描いた本

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メロリンQ、政治の舞台へ! – 山本太郎、その原点と行動力の秘密

2012年1月に書かれた本書「山本太郎 闘いの原点」は、俳優・山本太郎が、なぜ原発反対運動に身を投じることになったのか、その原点と行動の軌跡を、彼自身の言葉で赤裸々に綴った一冊です。

3.11、俳優生命を捨ててまで… 彼を突き動かした“怒り”の正体とは?

2011年3月11日、東日本大震災発生。未曾有の大災害を目の当たりにした山本氏は、それまで漠然としか認識していなかった「原発の危険性」に改めて向き合うことになります。そして、福島第一原発事故による深刻な状況を知れば知るほど、彼の中で「怒り」がこみ上げてきたと言います。

その「怒り」の根底には、福島の人々の苦しみ、そして真実を隠蔽しようとする政府や東京電力への不信感がありました。特に印象的なのは、東京に住む人々が、東北で発電された電力を使っていることを、多くの人が知らないという事実に対する衝撃です。「自分たちだけ安全な場所にいて、危険と痛みを押し付けてきた結果が、こんなにも酷い事態を招いた」– 山本氏の言葉は、私たち自身の無関心さを突きつけられるようで、深く考えさせられます。

行動する男、メロリンQ! デモの先頭に立ち、国会に乗り込むまで

山本氏の行動力は目を見張るものがあります。2011年7月11日、佐賀県庁前で起きた「玄海原発再稼働反対」の抗議活動。当初は300人ほどの規模だったデモ隊が、警察の規制により混乱が生じているのを目の当たりにした山本氏は、自ら先頭に立って県庁舎内に入ることを決意します。

この行動は大きな波紋を呼び、メディアは「山本太郎がデモ隊を先導」と大きく報道しました。俳優としての立場を考えれば、決してリスクの少ない行動ではありません。それでも彼は、「誰かが動かなければいけない」という強い信念のもと、自らリスクを背負う道を選んだのです。

“鬼軍曹”の母、フィリピンでの原体験… 山本太郎を形作ったもの

山本氏の行動力の源泉を探っていくと、幼少期の原体験に行き当たります。8歳頃に家族で訪れたフィリピン。そこで彼は、貧困や格差といった厳しい現実を目の当たりにし、同時に、言葉が通じなくても心を通わせることの大切さを学びました。

また、山本氏を語る上で欠かせないのが、”鬼軍曹”と称される母親の存在です。小学校時代、ゴミ拾いを途中で投げ出した彼を、母親は「状況を放って逃げたのが許せない」と、徹底的に叱りつけました。この経験から彼は、「逃げてはいけない。自分の行動に責任を持たなければならない」という強い意志を植え付けられたそうです。

俳優として、そして一人の人間として… 山本太郎の葛藤と未来への想い

本書では、俳優としての山本氏の姿も垣間見ることができます。高校時代に『元気が出るテレビ』のダンス甲子園に出場したことがきっかけで芸能界入り。その後、数々の映画やドラマに出演する中で、井筒和幸監督や深作欣二監督といった名匠たちとの出会いを通して、俳優としての喜びと奥深さを知っていきます。

しかし、3.11以降、原発反対運動に力を入れる彼の元には、以前のような仕事は来なくなりました。それでも山本太郎氏は、「お金よりも大切なものがある。自分の信念を貫くために、俳優生命を捨てる覚悟はできている」と語ります。

まとめ

本書「山本太郎 闘いの原点」は、一人の俳優が、社会と向き合い、自分の信念のために闘うことを決意するまでの軌跡を描いた、感動のドキュメンタリーです。

政治的な立場を抜きにしても、山本太郎氏のまっすぐな姿勢、行動力、そして信念の強さには心を打たれるものがありました。特に印象的だったのは、彼が原発事故の被害者や反対運動家と出会い、彼らの声に耳を傾け、共に歩もうとする姿です。それは、私たち一人ひとりが、社会に対して何をすべきかを問いかけているように感じました。

社会問題に関心のある方、政治に興味のある方、そして、自分の信念を貫く生き方に共感する方におすすめの一冊です。

本の目次と要約

文庫版まえがき

山本太郎が自身の経験を通して、本書で伝えようとしていることへの導入。円形脱毛症の経験や、政治家になった現在の自分への驚き、本書を通して伝えられる当時の不安定な状況などを語る。

文庫版序章 5年後の闘い 山本太郎×木村元彦

  • 3.11後の原点 5年前の脱原発運動開始時の心境を振り返り、その後の変化や、芸能界における問題意識、一市民として声を上げる重要性などを語る。
  • 僕たちの未来のために 原発事故が子供たちの未来に及ぼす深刻な影響について、自身の経験や感情を交えながら訴える。
  • 行動することの大切さ 原発事故後、様々な葛藤を抱えながらも、行動を起こすことを決意するまでの経緯や、具体的な行動内容について詳述する。
  • 許せないこと、忘れられないこと 原発事故に対する怒り、原発推進派への批判、メディアや政治家への不信感、そして現状を変えるために声を上げ続ける決意を表明する。
  • 「山本太郎」という生き方 芸能活動縮小と生活の変化、信念のために仕事を選ぶことの難しさ、政治活動への決意、そして自分らしい生き方について赤裸々に語る。

第1章 なぜ立ち上がったのか

  • 「原発反対」の一言が人生を変えた 原発事故後、沈黙を破って「原発反対」を表明したTwitterでの出来事、その後の活動の広がり、そして決意の背景を語る。
  • 「正しい」ことを求めて 原発事故の現状を目の当たりにし、情報操作や安全神話の欺瞞に怒りを感じ、行動を起こさずにはいられなかった山本太郎の心情を浮き彫りににする。
  • 声を上げる責任、沈黙する罪 原発事故を契機に、自らの無知を反省し、声を上げることの責任、そして沈黙することの罪悪感について言及する。
  • 行動がもたらすもの 脱原発運動を通して、人々の意識の変化や行動の広がりを実感し、勇気づけられるとともに、未来への希望を見出す。
  • 事務所を辞めるという決断 脱原発運動が芸能活動に影響を及ぼし、所属事務所との関係性が変化していく中で、最終的に事務所を辞める決断に至るまでの葛藤と決意を描く。

第2章 おいたち 鬼軍曹の母と役者体験

  • 原点となったフィリピン体験 子供時代に経験したフィリピンでの生活、貧困や厳しい現実を目の当たりにしたこと、そして母親の教育方針が、その後の価値観に大きな影響を与えたことを明かす。
  • 母の教え 「弱い立場の人に手を差し伸べる」「お金よりも経験を大切にする」という母親の教えが、山本太郎の人間形成に大きな影響を与えたことを具体的に説明する。
  • いじめと正義感 子供時代、いじめられた経験といじめた経験の両方を通して、正義感や弱者への共感、そして問題意識が育まれていった過程を語る。
  • テレビの世界へ 「ダンス甲子園」への出場をきっかけにテレビの世界へ進出し、人気番組「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」に出演するまでの経緯や、当時の活動内容を紹介する。
  • 役者の道へ 「元気が出るテレビ」卒業後、役者の道へ進んだ理由、そして数々の映画やドラマに出演し、演技力を磨いていく過程を辿る。
  • 深作欣二監督との出会い 映画「バトル・ロワイアルII 【鎮魂歌】」のオーディションでのエピソードや、深作監督との出会いを通して、役者としての意識が大きく変化したことを語る。
  • 俳優として、人間として 役者として成功を収めながらも、社会問題への関心を持ち続け、3.11を機に行動を起こす決意をした背景、そして俳優と人間の両立について葛藤する姿を描く。

第3章 そして再びメロリンQ

  • 告発なう?(笑) 何があっても覚悟してるよ 脱原発運動に対する脅迫や嫌がらせ、そしてそれに対する山本太郎の覚悟や信念を表明する。
  • 近いうち、本物のいい男になってるわ 脱原発運動を続ける中で、母親からの言葉の変化、そして山本太郎自身の変化と成長、そして未来への希望を語る。
  • 「原発反対」を表明してからの日々 芸能活動への影響、仕事が激減する現実、そしてそれでも信念を貫く決意を表明する。
  • メディアと原発 メディアの論調の変化、原発問題をタブー視する風潮、そして情報操作や隠蔽体質への批判を展開する。
  • 「トップランナー」でつながった2組のアーティスト NHKのトーク番組「トップランナー」で出会った、SOIL&”PIMP”SESSIONSと熊谷和徳との交流を通して、表現者としての共感や刺激、そして友情を育む様子を描く。
  • 「メロリンQ!」に戻ってきた山本太郎 脱原発運動を通して、自分自身と向き合い、自分らしく生きることを決意した山本太郎が、再び「メロリンQ!」としてエンターテイメントの世界に戻ってきた喜びと決意を語る。
  • まず一人でどれだけ頑張れるか。人生はひとり舞台 脱原発運動を通して、多くの人との出会い、そして一人で闘うことの大切さ、そして人生を「ひとり舞台」として力強く生き抜く決意を表明する。

第4章 太郎、未来の旅から帰る。ドイツかベラルーシか、25年後の日本は?

  • STOPPING NUCLEAR POWER NOW! ドイツでの脱原発運動の現場を訪れ、市民の意識の高さ、政府の取り組み、そして日本との違いを目の当たりにする。
  • チェルノブイリ原発事故の教訓 チェルノブイリ原発事故の被災地を訪れ、事故の爪痕、人々の苦しみ、そして情報統制の実態を目の当たりにする。
  • 25年後の未来のために ドイツとチェルノブイリでの経験を通して、日本の未来、そして子供たちの未来のために、原発に頼らない社会の実現に向けて、改めて決意を新たにする。

あとがき 山本太郎

  • 本書を出版するに至った経緯、そして本書に込めた思いを語る。
  • 原発事故後の日本の現状に対する危機感、そして未来への希望を語る。
  • 読者へのメッセージ、そして行動を呼びかける。

文庫版最終章 なぜ国会議員になったか

  • 政治家になるきっかけ 政治家になることを決意するまでの経緯、そして最初の選挙への挑戦と落選を振り返る。
  • 放射能と選挙前の葛藤 原発事故後の生活の変化、放射能への不安、そして政治への決意を語る。
  • 2013年7月、参議院選挙出馬 参議院選挙への出馬を決意するまでの葛藤、そして選挙活動を通して感じたこと、そして政治家としての決意を表明する。
  • 「山本太郎」という生き方 政治家として、そして「山本太郎」として、自分らしく生きることを決意する。

推薦文 内田樹

年表

  • 山本太郎の生い立ちから、原発事故後の活動、そして政治家になるまでを年表で振り返る。

関連リンク

山本太郎オフィシャルサイト:チラシのPDF配布や、公式グッズの販売も。

山本太郎チャンネル(YouTube):国会質問や意見交換の動画が中心。

山本太郎 X(Twitter):フォロワー数55万人超。山本太郎氏の活動がわかる。