希望の党、そして「都民ファーストの会」への疑問 – 音喜多駿著「贖罪」が明かす政治の光と影
「小池劇場」の終焉、そして「贖罪」へ – 音喜多駿が明かす小池都政の真実とは?
2018年4月5日に出版された音喜多駿著「贖罪 偽りの小池都政で私が犯した過ち」は、小池百合子東京都知事の側近中の側近として、2016年の都知事選勝利、そして2017年の都議選圧勝を経験しながらも、「都民ファーストの会」を離党するに至った著者が、その真相を赤裸々に綴った一冊です。
築地市場移転問題の迷走 – 小池知事の戦略と、その裏側
本書で大きく取り上げられているのが、小池都政の象徴的な政策の一つである築地市場の豊洲移転問題です。著者は、小池知事が選挙対策として豊洲市場の安全性を強調し、移転を延期したと指摘しています。小池知事は、地下水から環境基準値を超える有害物質が検出されたことを理由に移転延期を主張しましたが、著者は、その基準値が飲用水としての基準であり、市場の地下水が飲用に使用される予定はないことを指摘しています。
「盛り土問題」と百条委員会 – 都民の期待を裏切った「ブラックボックス」
さらに、小池知事が就任当初から情報公開を掲げていたにもかかわらず、築地市場移転問題に関する重要な意思決定プロセスが「ブラックボックス」化していたことを批判しています。例えば、小池知事は2017年6月20日に「築地は守る、豊洲を活かす」という基本方針を突如発表しましたが、その決定に至るまでの検討過程の資料は一切残されていませんでした。著者は、情報公開を掲げながら、実際には情報操作や隠蔽を繰り返す小池知事の姿勢に強い疑問を呈しています。
都民ファーストの会 – 独裁的な体制と「小池ファースト」への変質
著者はまた、「都民ファーストの会」内部の異様な実態についても詳細に記述しています。都議選後、幹事長職を解任された著者は、党内での度重なる締め付けや言論統制に直面します。新人議員との飲み会や、特定の議員グループでの会食は禁止され、文書質問や資料要求も自粛を要請されるなど、議員としての活動を著しく制限されました。著者は、これらの経験を通して、「都民ファーストの会」が都民のための組織ではなく、「小池ファースト」のための組織に変質してしまったと痛感したと述べています。
まとめ
本書は、小池都政の光と影を克明に描き出した貴重な記録であると同時に、政治家としての責任と向き合い続ける著者の真摯な姿勢が伝わってくる作品です。特に、小池知事の側近として都政に関わってきたからこそ見える視点や、豊富なエピソードを交えた臨場感あふれる筆致は、政治に関心の薄い読者にとっても読み応えのあるものとなっています。
おすすめポイント
- 小池都政の裏側を赤裸々に描いた、これまでにはない視点のノンフィクション
- 築地市場移転問題や希望の党設立など、注目度の高い政治テーマを扱っている
- 政治初心者でも理解しやすい、平易な文章と構成
どのような読者におすすめか
- 小池都政や都民ファーストの会の実態を知りたい方
- 政治の裏側や権力闘争に興味がある方
- 政治家を目指す、あるいは政治に関心のある若者
本書は、小池都政や都民ファーストの会に対して、批判的な立場をとっています。しかし、著者は単なる批判に終始するのではなく、自らの政治家としての責任と真摯に向き合い、今後の都政や日本政治のあり方について、建設的な提言も行っています。政治に関心の薄い人にとっても、現代日本の政治の抱える問題点や、政治家たちの葛藤を垣間見ることができる興味深い一冊と言えるでしょう。
本の目次と要約
まえがき
2018年現在の混迷する都政、特に築地市場移転問題を軸に、小池都政の問題点を指摘する。そして、小池知事と共に活動した著者自身の責任を認め、「贖罪」の意味を込めて、未来の都政への提言を行う。
第一章 小池知事との決別
- 小池知事「分身」との大ゲンカ:小池知事の分身とも言える荒木氏が、密室で決定された新代表となる。著者は、情報公開を掲げる都民ファーストの会において、不透明な人事と情報統制が行われていることに憤りを感じる。
- そして私は更迭された:都議選後、小池知事の意向で幹事長を更迭される。選挙の顔として活動していた小池知事が、選挙後に豹変したことに衝撃を受ける。
- 突然のテレビ出演NG:新幹事長により、メディア出演は許可なしに一切認められないと通達される。すでに決まっている収録も断るように言われ、著者は反発する。
- 新人との飲み会も一切禁止:新人歓迎会と称した飲み会を新人議員と計画していたことが問題視され、釈明を求められる。組織が許可する以外のグループ活動は事実上禁止され、著者は戸惑いを隠せない。
- 現職都議を自殺に追い込んだ「いじめ」事件:2011年に起きた樺山都議の自殺事件を取り上げ、都議会の異常なまでの締め付けの実態を告発する。
- 「天日干し」にされるファーストペンギン:小池知事の意向を忖度し、イエスマンばかりが優遇される党の体質を批判する。
- 「イエスマン」しか欲しくない小池知事:小池知事の意向に反する意見を述べた議員が冷遇される実態を、自身の体験を交えて語る。
- 陣中見舞いを返金され、領収書を返送する私:小池知事から受け取った陣中見舞い金の返金を求められ、領収書と共に送り返す。
- ありえないほどの「言論封殺」:メディア露出規制に加え、ブログやSNSでの発信内容についても厳しい制限が課せられていることを告発する。
- 「党内は自由闊達」という模範回答を徹底する矛盾:言論統制が行われているにも関わらず、対外的には「自由闊達」と虚偽の発言を繰り返す党の姿勢を批判する。
- 心が病み、漫画喫茶に入り浸る:度重なる締め付けと不条理な状況に疲弊し、漫画喫茶に入り浸るようになる。
- 政務活動費600万円、議員報酬60万円の「召し上げ」:政務活動費や議員報酬の一部を党に納入させられる仕組みに疑問を呈する。
- 「文書質問」と「資料要求」まで禁止される:政策提言の機会を奪うような、文書質問や資料要求の禁止に異議を唱える。
- 党代表を毎回密室で決める小池知事:都民ファーストの会では、重要事項は小池知事の側近による密室会議で決定される。著者は、民主的なプロセスが全く取られていないことに危機感を抱く。
- 密室的な意思決定を許す「独裁規約」:少人数の役員会で重要事項を決定するという、独裁的な規約に反対する。
- 都民ファーストは知事側近の「天下り」パラダイス:都民ファーストの会が、小池知事の側近の天下り先となっている実態を指摘する。
- 人を手駒のように動かす小池知事の手法:希望の党設立に際し、小池知事が側近を国政に送り込むために、都政を軽視していると批判する。
- 私が希望の党からの出馬依頼を断った理由:希望の党から出馬の打診を受けるも、小池知事のやり方に疑問を感じて断る。
- 記者会見で堂々と嘘を言う都民ファースト:離党の理由を「国政選挙への公認がもらえなかったから」と虚偽の説明をする都民ファーストの会に憤りを覚える。
- さらば、偽りの都民ファースト:都民ファーストの会は、情報公開や民主的な運営を掲げながら、実際には小池知事の意向に沿って都合よく動かされているに過ぎないと結論づける。
第二章 狙われた築地市場
- 築地に「失政」が凝縮されている:築地市場移転問題は、これまでの都政の失政が凝縮された象徴的な出来事であると指摘する。
- 市場移転の経緯を振り返る:築地市場移転問題の歴史を振り返り、小池知事の対応が都政に混乱をもたらしたと批判する。
- 築地市場を政争の具にする小池知事:小池知事が、築地市場移転問題を政敵である石原元知事への攻撃材料として利用していると指摘する。
- 市場移転の「延期」は正しかったのか:小池知事による市場移転延期は、政治的なパフォーマンスであり、都政に混乱をもたらしただけだと批判する。
- なぜ「高すぎる環境基準」が課せられたのか:豊洲市場の安全性について、過剰なまでの基準が設けられていると指摘する。
- 有害物質の「環境基準値超え」は想定内だった?:地下水から環境基準値を超える有害物質が検出された問題について、小池知事が事前に情報を掴んでいた可能性を示唆する。
- 「移転白紙撤回」はありえなかった:小池知事が市場移転の白紙撤回を検討していたことについて、現実的な選択肢ではなかったと指摘する。
- 蘇る「築地再整備」の亡霊:小池知事が打ち出した築地再整備案は、非現実的であり、実現の可能性は極めて低いと批判する。
- 都民ファーストの支離滅裂な対応:築地市場移転問題に対する、都民ファーストの会の対応が支離滅裂であったと批判する。
- 石原元知事が狙われたフケ:小池知事が、築地市場移転問題を利用して、石原元知事の責任を追及していると指摘する。
第三章 百条委員会に意味はあったのか
- 百条委員会の功罪:築地市場移転問題を巡り設置された百条委員会について、その功罪を検証する。
- 小池知事が仕掛け、世論が設置を促した百条委員会:百条委員会の設置は、小池知事が仕掛けた世論誘導の結果であると指摘する。
- 膨大な資料から露わになる都の隠蔽体質:百条委員会での調査により、都庁の隠蔽体質が明らかになったと指摘する。
- 東京都がひた隠にした「密約」の実態:豊洲市場の土地売買交渉において、都と東京ガスとの間で秘密裏に結ばれていた「密約」の存在を明らかにする。
- 政治的な圧力を匂わせる「土壌Xデー」:都の担当者が、東京ガスに対して政治的な圧力を匂わせる発言をしていた事実を明らかにする。
- 石原元知事が小池知事に出した「助け舟」:百条委員会で石原元知事が証言台に立ち、小池知事の主張を後押しするような発言をしたと指摘する。
- 百条委員会に意味はあったのか:百条委員会は、都政の闇を一部明らかにした一方で、石原元知事への個人攻撃の色彩が強く、政治的な思惑が見え隠れする結果となったと総括する。
第四章 小池知事の正体
- 政治家・小池百合子の中身は「空」だ:小池知事の政治姿勢や人間性について考察し、「空」であると分析する。
- 矛盾しまくりの「AI発言」:小池知事の「AI発言」を例に挙げ、その場しのぎの発言が目立つと指摘する。
- 小池知事は「根回し」をしない正面突破体質:小池知事は、事前に根回しをせずに、トップダウンで物事を進める傾向があると分析する。
- 「根回し」をしないという強み:小池知事の「根回し」をしないスタイルは、スピード感があり、既得権益を打破する上で有効な場合もあると評価する。
- 小池知事は薄情なのか:小池知事は、自身の利益のために側近を次々と切り捨ててきたと指摘する。
- 排除発言で露呈した「本性」:小池知事の「排除」発言は、その本質を表す象徴的な出来事であったと分析する。
終章 贖罪
- 「離党」の決断は正しかったのか:都民ファーストの会からの離党は、苦渋の決断であったが、結果的に正しい判断であったと総括する。
- 市場移転問題における重い責任:築地市場移転問題において、小池知事の側近として、結果的に混乱を招いた責任を認める。
- 石原慎太郎元知事の功績:築地市場移転問題の決着を図った石原元知事の功績を再評価する。
- 真の「都民ファースト」は実現するのか:小池都政の問題点を踏まえ、真の「都民ファースト」の実現に向けて、都民一人ひとりが当事者意識を持つことの重要性を訴える。
- あとがきにかえて:本書を執筆した思いと、今後の政治活動への決意を表明する。
関連リンク
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音喜多俊のブイログ(YouTube):動画本数1820本超。ほぼ毎日更新。
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