女性と地方が日本を救う!- 野田聖子氏が描く2040年の未来予想図とは? –
「みらいを、つかめ ― 多様なみんなが活躍する時代に」 (2018年) は、長年日本の政治の中枢で活躍してきた野田聖子氏が、「2040年頃まで」という長期的な視点に立ち、日本の未来の姿を展望するとともに、その実現のための具体的な政策を提示した意欲作です。
少子化は「静かなる有事」- 待機児童ゼロ、出産後2年間の育休取得を –
本書で野田氏が特に危機感を募らせているのが、「静かなる有事」と表現する少子化問題です。2016年には出生数がついに100万人を割り込みました。出生率が微増傾向にあるとはいえ、合計特殊出生率は1.44と依然として低い水準にとどまっています。
野田氏は、「子供を産む母親世代の人口が減少している」現状を踏まえ、少子化対策の抜本的な強化を訴えます。具体的には「出産後2年間の育児休業」と「2歳児からの全員入園」の実現、そして待機児童の解消を最優先課題としています。
女性が輝く社会へ – 管理職への昇進、選択的夫婦別姓の実現 –
野田氏は、少子化対策と並んで、女性の社会進出を促進する政策の重要性を訴えます。2017年時点で、管理職に占める女性の割合はわずか3.2%と、国際的に見ても極めて低い水準にとどまっている現状を打破するために、女性が働きやすい環境づくり、そして管理職や幹部にも昇進できるような社会の実現を目指しています。
中でも注目すべきは、選択的夫婦別姓制度の早期実現についてです。野田氏は、「夫婦の9割で、妻が夫の名字に改姓している」現状を踏まえ、働く女性が増える中で、姓を変えることによる職業上の不利益が顕在化していると指摘しています。そして、「婚姻の際、夫婦が希望する場合には、それぞれが元の姓を名乗ることを選択できる」選択的夫婦別姓制度について、国民へのさらなる説明を行い、理解を得た上で実現を目指すと明言しています。
地方が日本をリードする時代へ – 地方の魅力を高め、人を呼び込む –
本書では、東京一極集中の是正と地方の活性化についても、具体的な政策とともに提言を行っています。野田氏は、経済や生活環境の両面で地方の魅力を高め、「暮らしやすく、働きやすい地方」を実現することの重要性を強調しています。
地方への人の流れを作り出すために、野田氏は、インターネットやSNSを活用した販路拡大による農産物などの輸出拡大、地域独自の資源と資金を活用した「ローカル10,000プロジェクト」、バイオマス発電などによるエネルギーの地産地消などを推進しています。
まとめ
本書からは、長年、女性政治家として、また、一人の母親として様々な困難に立ち向かってきた野田氏だからこそ語ることのできる、日本の未来への強い危機感と、未来への希望を託す子供たちへの愛情が強く感じられました。
数値データや具体的な政策を多く盛り込むことで、読者に問題意識を共有するとともに、野田氏が描く未来への道筋を具体的に示そうという意図が伝わってきます。
政治に関心の薄い若い世代や、子育てに不安を感じている母親世代の方々にもぜひ手に取っていただき、日本の未来について考えるきっかけにしてほしい一冊です。

本の目次と要約
第1部 国民とともに 私の政治姿勢と政策の基本
- はじめに:国民とともに政策を考える ― 「双方向の政治」
- 政治家と国民が本音で対話し、ともに政策を作り上げていく「双方向の政治」の重要性を、筆者自身の経験を交えながら語る。
- 第1章 政治姿勢 ― 本音を語る
- 政治家として、時に批判を浴びながらも、国民のために「不都合な真実」を語り続け、行動してきた筆者の信念を述べる。
- 第2章 政策の基本 ― 目指すのは「世界基準の国」
- 「女性と地方が日本を救う」という信念のもと、従来の経済至上主義からの脱却と、真の豊かさを実現する「世界基準の国」を提唱する。
- 「落ち 着いて、やさしく、持続可能な国」を目指す
- 女性と地方が日本を救う
- パラダイムの転換
- 2040年を見据えて
- 第3章 憲法改正について
- 憲法改正は極めて重要な課題であり、特に情報通信技術(ICT)の発達などを踏まえ、時代に合った新しい憲法を検討すべきと説く。
第2部 「落ち 着いて、やさしく、持続可能な国」づくり
- 第1節 人財が日本をリードする(ヒューマン・キャピタル発展)
- 真の豊かさとは何かを問い直し、女性、高齢者、障害者を含むすべての人々が個性と能力を最大限に発揮できる社会の実現を訴える。
- フェアな社会に=「世界基準」に近づく
- 幼児教育の拡充
- 少子化対策
- 東京パラリンピック
- 第2節 地方が日本をリードする
- 東京一極集中の問題点と地方創生の重要性を指摘し、地方の個性と強みを活かした地域活性化策を提言する。
- 個性あふれる地方へ
- 地域活性化の主役としての農林水産業
- 個性を磨く観光業
- 第3節 持続可能な国を目指す経済政策
- 従来型の経済政策では限界があると指摘し、ダイバーシティとインクルージョンを支えるICTの活用、人材投資、社会保障制度改革などを提言。
- ダイバーシティとインクルージョンを支えるICT
- 世界基準に近づき、世界からより信頼される国に
- 第4節 持続可能なエネルギー供給
- 東日本大震災を教訓に、再生可能エネルギーの導入促進や省エネルギー化など、持続可能なエネルギー政策の必要性を訴える。
- 第5節 対談 ― これからの働き方
- 松本 晃(カルビー シニアチェアマン) × 野田 聖子
- 企業のトップとしてダイバーシティ推進に取り組んできた松本氏と、政治の分野で女性活躍を推進してきた野田氏が、これからの働き方について語り合う。
第3部 仲間たちからの提言 ― こどもみらい野田聖子プロジェクト
- 近未来のイノベーションについて
- 様々な分野の専門家が、少子高齢化、人口減少、環境問題、医療、教育、交通など、日本が抱える課題を解決するための近未来のイノベーションについて提言。
第4部 あとがきにかえて
- 林 真理子(作家) × 野田 聖子 対談
- 作家の林氏と野田氏が、子育て、女性の生き方、政治など、幅広いテーマについて語り合う。
関連リンク
野田聖子オフィシャルサイト:政策ページが見やすい。ブログも必見。
野田聖子 X(Twitter):頻繁に更新。野田氏の精力的な活動が分かる。
野田聖子(Instagram):野田氏の活動が写真で分かる。