女性外交官から政治家へ。松川るいの挑戦の軌跡を辿る!
「挑戦する力~It’s My Life~」(2022年発行)は、現職の参議院議員である松川るい氏が初めて執筆した書籍です。この本では、外交官から政治家という異色のキャリアを歩んできた著者の半生が、数々のエピソードとともに赤裸々に綴られています。
幼少期~東大時代:周囲の期待と自分の直感を信じて
松川氏は、1971年2月生まれ、幼い頃から読書好きの父の影響で、家の中に常にたくさんの本がある環境で育ちました。そんな彼女が東大合格を確信したのは、なんと高校2年生のとき。ミス東大コンテストの募集要項を目にしたことがきっかけでした。3000人もの応募者の中から選ばれるのは、AさんでもBさんでもCさんでも良いほど、甲乙つけがたい美少女ばかり。最終的には、誰が選ばれてもおかしくないという状況の中で、松川氏は東大受験という土俵に上がることを決意したのです。「土俵に上がれば25%の確率で勝てる」という、彼女らしい独自の視点と自信が、東大合格へと導いたのかもしれません。
外務省時代:国際社会の荒波の中で成長する日々
東大卒業後、松川氏は外務省に入省。念願の条約局法規課に配属されたものの、待ち受けていたのは想像を絶する厳しい現実でした。国際裁判、外交交渉[6]など、次々と降りかかる難題に、松川氏は持ち前の負けん気で立ち向かっていきます。これらの経験を通して、松川氏は外交官としてだけでなく、人間としても大きく成長していきます。
特に印象的なのは、米国務省に留学中に経験した、成績評価の危機です。レベルの高い授業を多く受講した結果、評定平均が退学ラインの3.0ギリギリになってしまったというエピソードからは、当時の彼女の奮闘ぶりが伝わってきます。この経験を通して松川氏は、国際社会を生き抜くためには、専門知識だけでなく、戦略的な思考と交渉術が重要であることを痛感したのではないでしょうか。
韓国勤務:歴史問題と文化の違いに揺れ動く心
松川氏は、韓国勤務の経験を通して、日韓関係の難しさ、そして韓国という国の魅力と課題を目の当たりにします。赴任当初は日米韓協力の進展を期待していたものの、日本大使館前に慰安婦像が設置されるなど、政治状況は悪化する一方。歴史問題の根深さ、そして反日感情の強さに、松川氏は大きな衝撃を受けます。
一方で、韓国での生活を通して、韓国人の勤勉さや優しさ、そして文化的な魅力にも触れていきます。韓国語の勉強にも励み、8年でかなり上達したというエピソードからは、彼女の努力家としての一面が垣間見えます。
政治家への転身:日本の未来のために、新たなステージへ
2015年、松川氏は、自民党から参議院選挙への出馬を打診されます。当初は、幼い娘を抱えながら議員活動をすることに不安を感じていましたが、日本の未来を憂い、自らの経験を活かしたいという思いから、政治家への転身を決意。結果、見事トップ当選を果たします。
議員活動を通して、松川氏は、少子化対策、女性活躍推進、安全保障など、様々な分野で精力的に活動しています。特に印象的なのは、男性の育休義務化議連の立ち上げです。これは、彼女自身が育児と仕事の両立に苦労した経験から生まれたものであり、日本の未来のために、男性の育児参加が不可欠であるという強い信念が感じられます。
まとめ
「挑戦する力~It’s My Life~」は、松川るい氏の半生を通して、国際社会の現実、日韓関係の課題、そして日本の未来について考えさせられる一冊です。彼女自身の経験に基づいた具体的なエピソードや、彼女らしいユーモアを交えた筆致は、政治に関心の薄い読者にとっても読みやすく、共感できる部分が多いのではないでしょうか。
特に、女性が社会で活躍することの難しさ、そしてその意義について、松川氏は自身の経験を通して力強く訴えかけています。これは、女性活躍推進が叫ばれる現代社会において、多くの女性にとって勇気を与えてくれるメッセージとなるでしょう。
政治に関心のある方はもちろん、国際関係、日韓関係、女性活躍などに興味のある方にもおすすめの一冊です。
本の目次と要約
まえがき
著者の松川るい氏について、政治家としての活動、本書を通して伝えたい「自縄自縛を解いて挑戦せよ」というメッセージを紹介する。自身の経験に基づいた人生訓、本書執筆の背景について触れ、読者へのメッセージを込める。
第1章 いま、日本のリーダーに求められるもの
ロシアによるウクライナ侵攻を例に挙げ、国家の危機における指導者の役割、国際社会における日本の立場、そして真に求められるリーダー像を考察する。具体的には、憲法九条の解釈、抑止力の概念、ハイブリッド戦争への対応、そして日本独自のインテリジェンス機能の必要性を論じる。
第2章 子ども時代 ― 勁い母、そして父
著者の生い立ち、家族構成、子ども時代のエピソードを通して、読書家であった父、教育熱心な母の影響、そして姉妹仲良く育った環境について述懐する。特に、厳しかった母の教育方針や父の言葉を通して学んだこと、読書を通して育まれた知的好奇心、姉妹で育んだ思いやりの心など、著者の価値観の形成に影響を与えたエピソードを紹介する。
第3章 東大時代 ― はじめての恋愛、そして夢
東京大学での学生生活、ESS(English Speaking Society)での活動、ゼミでの学び、外交官を志したきっかけ、そして当時の恋愛模様について振り返る。女性が少なく男性社会であった東大において、ESSでの活動を通して多様な価値観に触れ、議論を通して自己主張することの大切さを学んだ経験、恩師との出会いを通して外交官を目指すことを決意したエピソードなどを紹介する。
第4章 外務省時代 ― はじめての挫折、そして旅立ち
外務省入省後、配属された部署での仕事内容、経験を通して得た学び、直面した困難、そしてそれを乗り越えた過程について詳述する。新人時代の失敗談、国際法の専門性を活かした業務、米国留学での経験、国際機関や各国との交渉、そしてキャリアを重ねていく中で直面した女性外交官としての課題、やりがいなど、多岐にわたる経験を通して成長していく様子を描く。
第5章 閉ざされた時代 ― 不妊治療、そして韓国
不妊治療、出産、育児、そして韓国勤務など、仕事と家庭の両立に奮闘した時期の経験について語る。待望の長女出産と育児休暇取得、韓国での外交官としての活動、日韓関係の難しさ、歴史問題の根深さ、韓国社会で経験したカルチャーショックなどを赤裸々に綴る。
第6章 迷いの時代 ― 外交官か、政治家か
外交官としてのキャリアを積み重ねながらも、政治の世界への誘いを受ける中で生じた葛藤、決断の過程について詳述する。政界進出の誘いを受けた際の心境、家族や周囲の人々との相談、外交官としての仕事への未練、政治家としてのキャリアへの不安、最終的な決断に至るまでの葛藤と決意などを描く。
第7章 政治家時代 ― 理想と現実、そして「黒歴史」
政治家としての活動、議員生活、政策実現に向けた取り組み、そして失敗談などを交えながら、政治の世界の現実と自身の成長について振り返る。議員としての多忙な日々、政策実現に向けた課題、国会での議論、メディア出演、そして「黒歴史」と語る失敗談を通して、政治家としての責任の重さ、やりがい、そして成長していく様子を描く。
あとがき
本書を執筆した背景、本書に込めた思い、そして支えてくれた人々への感謝の気持ちを述べる。