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「音楽遍歴」小泉 純一郎|クラシックからエルビスまで音楽愛を語る本

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小泉純一郎氏が語る。クラシック音楽の深淵なる魅力とは?

2008年に発行された小泉純一郎氏著「音楽遍歴」は、一政治家の枠を超え、一人の音楽愛好家としての小泉氏の横顔が垣間見える興味深い書籍です。

本書では、小泉氏が12歳の時に出会ったクラシック音楽から、エルビス・プレスリーやモリコーネなどのポピュラー音楽まで、その音楽遍歴が語られています。 特に、クラシック音楽については、各作曲家や作品への深い造詣が伺え、単なる音楽談義を超えた魅力が詰まっています。

初めてのクラシック音楽体験、それはおもちゃの交響曲!

小泉氏がクラシック音楽を好きになったきっかけは、12歳の時に出会った「ハイドンのおもちゃの交響曲」でした。当時は、まだ演奏する音楽よりも、聴く音楽として意識し始めた頃。ある朝、ラジオから流れてきたメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」を聴いて、「ああ、この曲、好きだな」と心を奪われたそうです。

ハイレベルな音楽談義!バイロイト音楽祭でのシュレーダー首相との意外なエピソードとは?

小泉氏は、首相時代にドイツのシュレーダー首相(当時)に招待され、ワーグナー上演の”聖地”、バイロイトの音楽祭で「タンホイザー」を鑑賞しました。会場では、多くの観衆からの歓迎を受けましたが、シュレーダー首相は、劇場内のある場所に小泉氏と出ることを拒否。それは、かつてヒトラーも同じ場所に立っていたため、現職のドイツ首相と同じ”お立ち台”で手を振る姿が、ヒトラーの写真とダブって見えてしまうことを懸念したためでした。このエピソードからも、歴史認識に対するドイツの政治家の配慮が伺えます。

ワーグナーは難しい?まずはイタリア・オペラから!

小泉氏は、ワーグナーの楽曲を理解するまでに時間を要したと語っています。初心者には、まずはメロディーが美しく、歌が聴きやすいイタリア・オペラを薦めています。イタリア・オペラは、歌舞伎のように、一曲ごとに拍手したくなる派手さがあるのも魅力の一つ。ワーグナーは、途中で拍手することなく、切れ目なしに続くため、ストーリーを理解するにも知識が必要となります。

オペラは予習が命!事前に解説書やCDで準備を!

小泉氏は、オペラをより楽しむためには事前の準備が大切だと述べています。 初心者は、いきなり生のオペラを観るのではなく、事前に解説書を読んだり、ハイライトCDやDVDを観ておくことを推奨しています。実 際のオペラでは、耳慣れた曲ばかりが演奏されるとは限りません。そのため、事前にあらすじや楽曲を理解しておくことで、「あの曲が流れてきた!」と感動もひとしおとなるはずです。

まとめ

「音楽遍歴」は、クラシック音楽ファンはもちろん、小泉氏の政治家としての一面とは異なる、人間味あふれる素顔を知りたい人にもおすすめの一冊です。 政治的な立場を超えて、音楽という共通言語を通して、小泉氏の感性や人生観に触れることができます。

おすすめポイント

  • 豊富なエピソードとユーモアあふれる語り口で、クラシック音楽初心者でも気軽に楽しめる。
  • 小泉氏の音楽に対する深い愛情と造詣の深さが伝わってくる。
  • 政治家としての顔とは異なる、一人の人間としての魅力が発見できる。

読書後の感想

小泉氏の音楽への情熱は、クラシック音楽の奥深さを改めて認識させてくれるとともに、音楽が持つ力、そして音楽と人生の密接な関係を感じさせてくれます。政治という舞台を降りた後も、音楽を通して自身の感性を磨き続けている小泉氏の姿は、多くの読者に感動を与えるでしょう。 特に、クラシック音楽に関心のある方、小泉氏のファン、そして人間味あふれるエッセイを読みたい方におすすめの書籍です。

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本の目次と要約

I クラシックとの出会い

  • クラシックとの出会い – 初めてクラシックレコードを購入した著者。幼少期の音楽体験から、クラシック音楽にのめり込んでいったきっかけについて。
  • ヴァイオリンを始めた十二歳 – ヴァイオリンを始めたきっかけと、初期に演奏した曲、練習時のエピソードについて。
  • 「なんで、きれいな曲なんだろう」 – 初めてクラシックレコードを購入した時のエピソードや、繰り返し聴くことでクラシック音楽の良さがわかるという著者の持論について。
  • ブラームスはわからなかった – 様々な作曲家のヴァイオリン協奏曲を聴く中で、ブラームスだけは理解できなかったというエピソードについて。
  • 驚くべき才能の持ち主 パガニーニ – パガニーニのヴァイオリン協奏曲の魅力と、その演奏技巧の素晴らしさについて。
  • モーツァルトで百人一首 – モーツァルトの音楽と百人一首を組み合わせたCDの思い出について。
  • ハイフェッツを聴いて自分の下手さ加減がっかり – ヴァイオリニスト、ハイフェッツの演奏を聴いて感銘を受けたエピソードや、他の演奏家との比較、演奏家に対する考え方について。
  • バッハとヴィターリの「シャコンヌ」 – バッハとヴィターリの「シャコンヌ」を比較し、それぞれの曲想の違いについて解説。
  • フィンランドの風景と合致しているシベリウス – シベリウスの音楽とフィンランドの風景の調和について、著者の体験を交えて解説。
  • 全作集めたいエルガー – エルガーの音楽の魅力と、全作品を集めたいという著者の思いについて。
  • 要は自分に合うか合わないか – 音楽の好みは人それぞれであり、評論家の評価よりも自分に合うかどうかが重要だとする著者の持論について。
  • 批評家は感情的な演奏を好まない – 批評家の音楽の見方と、演奏家に対する評価について。
  • いでよ、作曲、編曲ができるヴァイオリニスト – 現代のヴァイオリニストに求められる作曲、編曲能力の重要性について。
  • BGMで聴いて広がったレパートリー – BGMとして様々なジャンルの音楽を聴くことで、レパートリーが広がったという経験について。
  • 音楽の好みは押しつけないほうがいい – 音楽の好みを押しつけずに、自然に音楽と触れ合うことの大切さについて。
  • 「音学」より「音楽」を – 理屈ではなく、感覚的に音楽を楽しむことの重要性について。
  • 今はレコードの解説も読まない、オーディオにもこだわらない – 音楽との向き合い方の変化について。
  • オーケストラの指揮者と首相はまったく別のもの – 指揮者と首相の仕事の共通点と相違点について。
  • まだまだ聴いていない良い曲が沢山ある – 音楽への探求心と、未知の音楽との出会いへの期待について。
  • わかりやすい曲から入ろう – クラシック音楽の初心者に対するアドバイス。
  • アンコールへの注文 – アンコールで演奏される曲への期待と、日本の歌謡曲を取り入れることへの提案。

II オペラは愛である

  • 人間業とは思えなかったマリオ・デル・モナコ – テノール歌手マリオ・デル・モナコの歌声に衝撃を受けた思い出について。
  • 最初は理解できなかった「トリスタンとイゾルデ」 – ワーグナーのオペラ「トリスタンとイゾルデ」を初めて観た時の感想と、当時のオペラに対する知識の不足について。
  • オペラにもいろいろあることを知ったロンドン時代 – ロンドン留学中に様々なオペラに触れ、オペラの多様性を知った経験について。
  • 物語の筋がわかればもっと面白くなる – オペラ鑑賞のポイントとして、事前に物語の筋を理解しておくことの重要性を解説。
  • 最初はイタリア・オペラが入りやすい– オペラ初心者には、親しみやすいイタリア・オペラを薦める理由について。
  • オペラが表現するものは「愛」– オペラのテーマとして描かれる「愛」について。
  • 「言わぬが花、聞かぬが花」– ワーグナーのオペラ「ローエングリン」の教訓について。
  • ワーグナーは序曲から入ろう – ワーグナーのオペラを鑑賞する際のアドバイス。
  • バイロイト音楽祭での出来事 – バイロイト音楽祭でのシュレーダー首相とのエピソードを通して、歴史と音楽の関係について考察。
  • ヒトラーを気にしたシュレーダー– シュレーダー首相がバイロイト音楽祭で特定の場所に立つことを避けた理由について。
  • 音楽自体に罪はないが – ワーグナーの音楽とナチス・ドイツの関係について、著者の考えを述べる。
  • 名声を確立する前にいい作品がある – プッチーニの作品における、初期の作品の評価について。
  • 主演の二人が抱擁しなかった理由 – オペラ「トゥーランドット」の演出に関するエピソードについて。
  • 演目選びは難しい – オペラ鑑賞の際の演目選びの難しさについて。
  • いきなり生のオペラを観る前に– オペラ初心者に向けて、事前にCDやDVDで予習しておくことを推奨。
  • 歌舞伎「勧進帳」こそ日本の傑作オペラ– 歌舞伎「勧進帳」を日本のオペラと捉え、その魅力について解説。
  • 忠臣蔵も「うそ」がポイント– 忠臣蔵における「うそ」の演出について。
  • 歌舞伎とオペラの共通点 – 歌舞伎とオペラの共通点について。
  • 千両役者のすごさ – 歌舞伎役者の演技力について。
  • 日本のオペラとオペラハウス – 日本のオペラハウスの現状と、理想的なオペラハウスのあり方について。
  • 読み替え演出はやらないほうがいい – オペラにおける読み替え演出に対する批判的な意見。
  • 初心者におすすめの作品 – オペラ初心者におすすめの作品の紹介。

III エルヴィス、モリコーネ、そして遍歴の騎士

  • FENから流れてきたエルヴィスの歌声 – エルヴィス・プレスリーの音楽との出会いについて。
  • 言葉にしにくいエルヴィスの歌のうまさ、独特さ – エルヴィス・プレスリーの歌唱力の魅力について。
  • パット・ブーンとペレス・プラード – エルヴィス・プレスリー以外のポピュラー音楽との出会いについて。
  • 熱烈な愛情表現の三連発 – エルヴィス・プレスリーの楽曲「アイ・ニード・ユー・ラブ」の魅力について。
  • エルヴィスの聖地で歌う – エルヴィス・プレスリーの墓地を訪れた際のエピソード。
  • 突然、ある音楽に引き込まれる – エンニオ・モリコーネの音楽との出会いについて。
  • マイ・フェイヴァリット・モリコーネ – エンニオ・モリコーネのお気に入りの楽曲を集めたCDをプロデュースしたエピソード。
  • X JAPANもバラードが好き – X JAPANの音楽との出会いについて。
  • 私のカラオケレパートリー – カラオケのレパートリーについて。
  • 国会議員はカラオケが必須科目 – 政治家にとってのカラオケの重要性について。
  • 歌と踊りは世界共通 – 音楽とダンスの普遍性について。
  • いつも口ずさんだ「見果てぬ夢」 – ミュージカル「ラ・マンチャの男」の楽曲「見果てぬ夢」への思い入れについて。
  • オペラより敷居が低いミュージカル – ミュージカルの魅力と、オペラとの比較について。
  • 新たな遍歴の旅へ – 音楽への尽きない探求心について。

補足

希代の政治家による音楽談義 – 池田卓夫 – 著者の音楽に対する造詣の深さについての解説。

謝辞 – 本書の刊行にあたり、協力してくれた人々への感謝の言葉。

作曲家と主な作品 – 本文中に登場する作曲家と、その代表作の紹介。

演奏家の横顔 – 本文中に登場する演奏家の紹介。

「私の好きなエルヴィス」著者解説 – エルヴィス・プレスリーのチャリティアルバムに収録された楽曲への著者の解説。

「私の大好きなモリコーネ・ミュージック」収録曲一覧 – モリコーネのチャリティアルバムに収録された楽曲の一覧。

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