石破茂氏が語る、国防のリアル
ミサイルは待ってくれない!元防衛庁長官が語る、日本の危機とは?
「国防」は2004年に発行。
2002年から2004年まで防衛庁長官を務めた石破茂氏が、日本の安全保障について、自身の経験を踏まえながら解説した本です。
7分で日本に到達!?北朝鮮ミサイルの脅威
石破氏は、まず日本が直面する危機として、北朝鮮のミサイル問題を取り上げています。北朝鮮のミサイルは、日本までわずか7分で飛来する可能性があり、核、生物兵器、化学兵器を搭載することも可能であると指摘しています。
憲法上の問題?自衛隊の意外な実力不足
北朝鮮の脅威に対し、自衛隊のF-15戦闘機で反撃できないのかという問いに対し、石破氏は「どんなに時間があっても攻撃できない」と断言しています。これは憲法上の問題ではなく、F-15戦闘機自体に敵地を攻撃する能力がほとんどないためであると説明しています。自衛隊の役割は、あくまで領空侵犯をしてきた敵機を攻撃することであると強調しています。
石油確保のために!イラク戦争への自衛隊派遣の真相
石破氏は、イラク戦争への自衛隊派遣についても言及しています。
その理由として、
① 石油の安定供給という日本の国益
② 国連の要請に応え、国際社会における責任を果たす
③ イラク人の期待に応える
④ 日米安全保障体制の実効性を高める
の4点を挙げています。
特に、日本は石油の約90%を中東に依存しており、その安定供給は死活問題であると訴えています。
自衛隊は「喜んで」危険な任務へ?
また、自衛隊の海外派遣におけるリスク管理の重要性についても触れています。
自衛隊員から「大臣、万が一のことがあった時に、まさかあなたが辞めるなんて言いませんよね?」と問われたエピソードを交え、隊員たちが命の危険を顧みず任務に当たっている現実を明かしています。
そして、リスクを最小限に抑えつつ、隊員を守るための万全の対策を講じることが、政治家としての責任であると主張しています。
マスコミは偏向報道?自衛隊の真実の姿とは
石破氏は、鳥インフルエンザの際に、自衛隊が出動する法的根拠を探すのに苦労したエピソードを紹介しています。自衛隊は、あくまで法律に基づいて行動する組織であり、政治家や国民の感情論だけで動くことはできないというジレンマを吐露しています。
また、自衛隊のイラク派遣に対するマスコミ報道についても疑問を呈し、「いつか来た道」といったフレーズを用いて、自衛隊の活動を必要以上に危険視する論調に反論しています。
政治家も国民も無関心?日本の安全保障の課題
石破氏は、日本の安全保障に対する政治家や国民の意識の低さについても警鐘を鳴らしています。防衛費の中身がほとんど吟味されず、「イージス艦は戦艦大和と同じ」といった発言をする政治家がいることを例に挙げ、危機感を募らせています。
そして、「政治家がもっと勉強すべきだ」「国民が知る権利を持っているのに伝える努力をしていない」と、政治家と国民双方に、安全保障への意識改革を強く求めています。
まとめ
石破氏の「国防」は、防衛問題に関して深い知識と経験に基づいた提言が数多く示されており、日本の安全保障について考える上で大変勉強になる一冊でした。
特に、自衛隊の活動や日米安保体制の実態、国際社会における日本の立場など、普段なかなか触れる機会のないテーマについて、分かりやすく解説されている点が印象的でした。
本の目次と要約
第一章 テロとの戦いは終わらない
世界の安全保障環境が冷戦期とは一変し、テロや大量破壊兵器の拡散など、新たな脅威に直面していることを指摘しています。
国連憲章の実効性の限界や、国際社会における法の不在を論じ、日本が自らの安全を確保するためには、従来の枠にとらわれない発想の転換が必要であると訴えています。
第二章 イラク戦争とは何だったのか
イラク戦争への自衛隊派遣の意義について、石油の安定供給や国際社会への貢献など、4つの視点を挙げて解説しています。
特に、日本は石油の90%を中東に依存しており、その安定供給は死活問題であると強調しています。
同時に、自衛隊派遣におけるリスク管理の重要性についても言及し、隊員を守るための万全の対策を講じる必要性を訴えています。
第三章 「軍事オタク」の履歴書
石破氏が政治家を志した背景や、政治家としての歩みを振り返りながら、国防に対する考え方を育んできた過程を語っています。
幼少期に戦争漫画を読みながら「かっこいい」「戦争は嫌だ」という両方の感情を抱いていたことや、25歳の時に田中角栄氏に請われて衆議院議員選挙に出馬したエピソード、北朝鮮を訪問した際の衝撃など、具体的なエピソードを交えながら、自身の思想形成について述べています。
第四章 防衛庁長官の日常
防衛庁長官時代の多忙な日々を振り返りながら、日本の安全保障の現状や課題、政治のあり方などについて、率直な意見を述べています。
就任当初、長官室に世界地図がなかったというエピソードや、毎朝4時40分に起床し、ニュースをチェックする生活、防衛庁の職員が法律を作らないことに驚いたことなど、興味深いエピソードが満載です。
第五章 テポドンは防げるか
北朝鮮のミサイル問題をテーマに、日本のミサイル防衛(MD)について解説しています。
2003年に北朝鮮がミサイルを発射した際、石破氏のもとに情報が上がるのが遅れたという報道は誤りであり、実際にはすぐに情報が上がってきていたことを明かしています。
また、「ミサイルは狂犬」とのたとえを用い、MD導入の必要性を訴えています。
第六章 貴方も国を守ってください
日本の安全保障を支える自衛隊の現状や課題、自衛隊と国民の関係などについて、具体的なエピソードを交えながら解説しています。
フランスの「一日入隊」制度を紹介し、国民の過半数が自衛隊を支持しているという調査結果を示しながら、国民がもっと国防に関心を持つべきだと訴えています。
第七章 世界は「力」で動いている
国際社会の現実を直視し、「力」の論理が支配する世界において、日本がどのように生き残っていくべきかを考えています。
鳥インフルエンザの際に、自衛隊が出動できない可能性があったというエピソードを交え、法律の不備や国民の意識の低さなど、日本の安全保障の脆弱性を指摘しています。
第八章 対米追随とならないために
日米安全保障条約の意義や役割について解説し、日米同盟の重要性を再確認しています。
同時に、対米追随と批判されることなく、対等なパートナーとして米国と向き合っていくためには何が必要なのかを、具体的な事例を挙げながら論じています。
第九章 これでいいのか、日本の防衛
日本の防衛政策の現状と課題を、具体的な事例を挙げながら解説し、今後のあり方について提言しています。
特に、防衛庁の官僚主義や縦割り行政の弊害を指摘し、政治家がリーダーシップを発揮して改革を進める必要性を訴えています。
関連リンク
石破しげるオフィシャルサイト:プロフィールに注目!70年代のアイドルが好き。
イシバチャンネル:趣味についても語っており、石破氏の人となりが分かる。
石破茂オフィシャルブログ:週1回のペースで書かれており、読み応えのあるブログ。
石破茂 X(Twitter):フォロワーは20万人を超えるが、更新頻度は少なめ。
石破茂 Instagram:石破氏の政治活動が写真で楽しめる。