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「日本人のための「集団的自衛権」入門」石破茂|安全保障政策を解説した本

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集団的自衛権について、わかりやすく解説した本

2015年に出版された石破茂氏著「日本人のための『集団的自衛権』入門」は、当時大きな論争を巻き起こした「集団的自衛権」について、わかりやすく解説した一冊です。

「集団的自衛権」と「集団安全保障」の違い

本書はまず、「集団的自衛権」と混同されやすい「集団安全保障」の違いについて解説しています。 「集団安全保障」とは、国連憲章に基づき、安全保障理事会の決定に従って加盟国が協力して国際平和と安全を維持する仕組みです。 一方、「集団的自衛権」とは、同盟国などが攻撃された場合、自国が直接攻撃されていなくても、共同で防衛する権利のことです。

戦後、日本政府は「集団的自衛権」をどう解釈してきたのか?

では、日本は「集団的自衛権」をどのように考えてきたのでしょうか?
本書では、戦後から1981年までの日本政府の解釈を6つの段階に分けて解説しています。

当初は「自衛権」そのものを否定していた日本ですが、1954年の自衛隊発足以降、「個別的自衛権」は認めつつも、「集団的自衛権」の行使は憲法上許されないという立場をとるようになりました。

「集団的自衛権」行使の根拠を問う! 国際紛争における「奇妙な見解」とは?

では、なぜ日本は「集団的自衛権」を行使できないのでしょうか? 本書では、その根拠とされてきた議論を検証し、「奇妙な見解」を指摘しています。

例えば、「憲法上、交戦権が否定されているから」という議論に対し、著者は憲法のどこにも「集団的自衛権」を否定する直接的な表現はないと反論しています。

さらに、国際法上、「他国への攻撃」が「自国への攻撃」とみなされる場合があることを示し、「個別的自衛権」だけで対応できるという主張は、国際社会の感覚と異なる「国内向けの議論」だと批判しています。

「集団的自衛権」行使で日本はどうなる? 具体的なケーススタディで徹底検証!

「集団的自衛権」の行使が可能になった場合、自衛隊の活動はどう変わるのでしょうか? 本書では、「外国と合同でミサイル防衛訓練はできるのか」「アメリカ軍艦が攻撃された場合、自衛隊は守ることができるのか」など、具体的なケーススタディを通して、その影響を分析しています。

「集団的自衛権」は本当に必要なのか? さまざまな疑問に答える対話形式で納得!

本書は後半部分で、集団的自衛権をめぐる16の疑問について、対話形式で解説しています。

例えば、「自衛隊が地球の裏側で戦争をすることになるのでは?」という問いに対して、著者は「集団的自衛権」を行使する場合でも、それはあくまで必要な場合に限られると説明しています。

その他にも、「ソフトパワーで十分ではないか」「アメリカは本当に望んでいるのか」「中国を刺激しないか」など、読者の疑問に答える形で、集団的自衛権の必要性について多角的に論じています。

憲法改正、国際貢献… 日本が進むべき未来とは?

本書の最後には、著者が構想する「国家安全保障基本法案」が収録されています。これは、日本の安全保障政策の根幹を定める法律であり、自衛隊の役割や国際貢献、武器輸出など、重要な論点が網羅されています。

まとめ

本書は、難しい専門用語を避け、豊富な事例や比較を用いることで、「集団的自衛権」という複雑な問題をわかりやすく解説しています。政治的な立場に関わらず、日本の安全保障について深く考えたいと考えるすべての人におすすめの一冊です。特に、憲法改正や日米同盟、国際情勢に関心のある方は必読と言えるでしょう。

本の目次と要約

はじめに

集団的自衛権に関する議論が高まっている現状を受け、国民一人ひとりがこの問題について理解を深める必要性を説く。

第一章 「集団的自衛権」入門編

  • 戦争は禁止されている: 国連憲章や日本国憲法における戦争の放棄と自衛権について解説する。
  • 集団安全保障と集団的自衛権: 集団安全保障と集団的自衛権の違い、国際連合における集団安全保障の仕組みと課題を説明する。
  • 「集団的自衛権」には三つの解釈がある: 集団的自衛権の三つの解釈を紹介し、国際社会における主流な解釈について解説する。
  • 自衛権は「自然権」: 日本国憲法における自衛権の解釈、自衛権は生まれながらに持つ権利であるという考え方を示す。
  • ベトナム戦争は「自衛戦争」か?: ベトナム戦争を事例に、集団的自衛権の濫用を防ぐための要件について解説する。
  • 「自衛」と「防衛」は何が違う?: 自衛と防衛の言葉の違いに注目し、国際社会における自衛権の解釈について考察する。
  • ニカラグア事件で国際司法裁判所はどう判断したか?: ニカラグア事件における国際司法裁判所の判決を分析し、集団的自衛権の法的根拠を明確にする。
  • 日本は「自衛権」をどう考えてきたか 六つの段階: 日本における自衛権の解釈の歴史を六つの段階に分けて解説する。
  • 「行使はできない」の根拠を疑う 交戦権の問題: 集団的自衛権を行使できないとする主張の根拠について、交戦権の問題を中心に検証する。
  • 憲法は「権利」と「義務」を分けている: 憲法における権利と義務の関係性を、集団的自衛権の文脈から考察する。
  • 「行使はできない」と「行使しない」は違う: 集団的自衛権を行使できないとする解釈が、政治状況に影響された可能性を指摘する。
  • 「行使可能」でどうなるか どこまで線引きをするのか: 集団的自衛権行使が認められた場合の具体的な場面を想定し、線引きの問題について議論する。
  • ミサイル迎撃は不可/食糧補給と武器補給/アジアからの信頼を得よ: ミサイル防衛、後方支援における具体的なケースを検討し、集団的自衛権の適用範囲について考察する。

第二章 「集団的自衛権」対話編

  • 地球の裏側で戦争するつもりでは?: 集団的自衛権行使により自衛隊が海外で戦争をするという誤解を解き、地理的条件ではなく必要性に基づいて判断することを強調する。
  • ソフトパワーの時代ではないか?: ソフトパワー外交の重要性を認めつつ、軍事力と外交力の関係性、多様な要素から構成される日本の外交力を分析する。
  • 卑怯で何が悪いのか?: 同盟国への支援と負担の関係性について、「卑怯」という言葉を用いながら考察する。
  • アメリカは本当に望んでいるのか?: アメリカにおける集団的自衛権に対する見解の変化、日米同盟の強化と相互運用性の必要性を説明する。
  • 想定されている事態は非現実的では?: 集団的自衛権行使の具体的なケースを検討し、現実的なシナリオと国際社会の認識とのずれを指摘する。
  • 個別的自衛権で何とかなるのでは?: 個別的自衛権と集団的自衛権の使い分け、国際法上の解釈と国内議論のギャップについて解説する。
  • まずはお前が隊員になれ: 自衛隊の任務の危険性、隊員の使命感、外部からの偏見について言及する。
  • 自衛官は嫌がっているのでは?: 自衛隊内部における集団的自衛権に対する意見の多様性、政治と軍事の関係性、海上自衛隊の危機感について解説する。
  • アメリカの巻き添えになるだけではないか?: 同盟のジレンマ、日米同盟における相互依存と役割分担、日本の主体的な安全保障政策の必要性を論じる。
  • テロリスト掃討もやるつもりですか?: テロリスト掃討作戦と集団的自衛権の関係性、憲法上の解釈、現実的な課題、国際協力の重要性を解説する。
  • 憲法第九条のおかげで平和なのでは?: 戦後日本の平和と憲法第九条の関係性について、国際情勢や日米同盟の影響を考慮しながら考察する。
  • アメリカとの関係は対等になるのか?: 集団的自衛権行使と日米関係、米軍基地問題、対等なパートナーシップ構築の可能性について議論する。
  • 中国・韓国を刺激しないか?: 集団的自衛権行使に対する中国や韓国の反応、アジア諸国の安全保障上の思惑、日米同盟の抑止力について考察する。
  • 一体、どんな危機があるというのか?: 日本が直面する潜在的な脅威、国際情勢の変化、安全保障環境の不確実性について解説する。
  • 徴兵制への布石では?: 集団的自衛権行使と徴兵制の関係性、自衛隊の志願者数、徴兵制のメリットとデメリット、国民の義務と権利について論じる。
  • 結局、イケイケドンドンになるのでは?: 集団的自衛権行使の歯止め、法制度における要件、国民の意識、政治の責任について考察する。

付録 国家安全保障基本法について

  • 安全保障基本法の必要性、基本理念、基本方針、自衛権の行使、国際平和協力、武器の輸出入等に関する内容を解説する。

関連リンク

石破しげるオフィシャルサイト:プロフィールに注目!70年代のアイドルが好き。

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