沖縄問題解決への提言 – 橋下徹氏が示す「ケンカ道」とは? –
2018年9月の沖縄県知事選で辺野古移設反対を掲げた玉城デニー氏が当選したことを受け、橋下徹氏が沖縄問題解決のための具体的な方法を提示した書籍「沖縄問題、解決策はこれだ! ―これで沖縄は再生する―」(朝日出版社)。本書は、橋下氏が沖縄で実際に行った講演内容に加筆したもので、2019年に出版されました。
橋下流「ケンカ道」の真髄
本書は、単なる沖縄問題の解説書ではありません。橋下氏が8年間の政治家時代に培ってきた、政治的ケンカのノウハウを惜しみなく公開した、いわば「指南書」としての側面を持っています。
「沖縄の問題は、本土の国会 議員や日本政府と、いかに政治的にケンカをしていくべきか」という視点から、具体的な方法論を提示しています。
例えば、橋下氏は、「グレートスピーカー」の重要性を説いています。政治家は、単に事実を述べるだけでなく、時には衝撃的なメッセージを発信することで、メディアを通じて世論を動かす必要があると主張しています。
その具体的な例として、橋下氏は、自身が大阪府知事時代に提唱した「関西国際空港への沖縄米軍基地誘致案」や「大阪八尾空港へのオスプレイ誘致案」を挙げています。これらの提案は、当時大きな波紋を呼びましたが、橋下氏は、世論の関心を沖縄問題に向け、議論を活性化させるためには必要な行動であったと振り返っています。
具体的な行動 – 大阪の成功体験から学ぶ –
橋下氏は、具体的な行動を起こすことの重要性を繰り返し強調しています。
その例として、橋下氏は、大阪都構想の実現に向けた取り組みや、大阪の観光客誘致のための戦略などを紹介しています。橋下氏は、大阪都構想の実現に向けて、反対派との激しい議論も辞さず、時には強硬な手段も用いながら、国を動かすために尽力しました。また、観光客誘致においては、「雑多さ、猥雑さ」を前面に押し出すという、従来の常識にとらわれない大胆な戦略を展開しました。
沖縄が進むべき道 – 具体的な「沖縄ビジョンX」 –
橋下氏は、沖縄問題の解決には、沖縄独自のビジョン、すなわち「沖縄ビジョンX」を策定し、国を動かすための戦略的な行動を起こすことが重要だと主張しています。
その具体的な内容として、橋下氏は、以下のような政策を提案しています。
- 国際都市構想の復活と強化:
橋下氏は、1996年に策定された「国際都市形成構想」を高く評価し、その復活と強化を提言しています。特に、自由貿易地域制度の拡充や税制上の優遇措置、入国手続きの簡素化など、大胆な規制緩和や経済特区の創設を訴えています。 - 統合型リゾート(IR)の誘致:
橋下氏は、IRの誘致は、沖縄経済の活性化に大きく貢献すると考えています。特に、普天間基地跡地へのIR誘致は、その経済効果の大きさからも、積極的に検討すべきだと主張しています。 - 沖縄独自の文化発信:
橋下氏は、沖縄が持つ独自の文化や歴史を活かした観光戦略の重要性を説いています。
まとめ
本書は、沖縄問題に対して、従来の政治家や学者とは異なる、非常にユニークな視点から書かれた本です。橋下氏の政治経験に基づいた具体的なエピソードや提案は、読者に多くの示唆を与えてくれます。
特に、沖縄問題に関心の高い人や、政治や行政に関わる仕事をしている人にとって、本書は必読と言えるでしょう。
本の目次と要約
第1章 沖縄問題に取り組むための心得
- 沖縄問題を「言いっ放し」にしない 沖縄の基地問題について、多くの人が意見を言うだけで具体的な解決策を示さない傾向を批判。具体的な解決策まで提示する責任を持つべきだと主張。
- 沖縄県民は「被害者意識」を捨てるべき 沖縄県民が「被害者意識」を持つことは理解できるが、いつまでもその立場に甘んじるのではなく、主体的に問題解決に取り組むべきだと訴える。
- 「沖縄ビジョンX」で具体的な解決策を示す 過去の沖縄振興策の失敗を踏まえ、具体的な解決策を示す「沖縄ビジョンX」の必要性を提唱。以降の章で、その具体的な内容を詳述していく。
第2章 こんな重要な沖縄だからケンカに勝てる
- 地政学的に重要な沖縄 世界地図と歴史を紐解きながら、米中対立の最前線に位置する沖縄の地政学的リスクと重要性を解説。
- 冷戦後の世界と沖縄 冷戦終結後のアメリカの一強体制と、中国・ロシアの台頭を背景に、沖縄の軍事拠点としての重要性が増していると分析。
第3章 沖縄ビジョンX 1996年 国際都市形成構想のブラッシュアップ
- 経済活性化こそ地域活性化の道 従来の行政主導型の地域活性化策を批判し、「民間企業が儲ける仕組み」を作る重要性を説く。
- オンリーワンとなる「ビジョンX」の作り方 大阪の成功例を参考に、その地域だけのオンリーワンの魅力を発掘し、尖らせる「ビジョンX」の作り方を解説。
- 大阪ビジョンX – 「中継都市」と「付加価値都市」の二本柱 「中継都市」構想と「付加価値都市」構想の二本柱で大阪が成功した理由を、万博誘致やIR誘致の具体例を挙げながら解説。
- 外国人観光客を惹きつける、魅力的な「中継都市」とは? 大阪・道頓堀の事例を挙げながら、外国人観光客を惹きつける都市戦略の要諦を解説。画一的で無個性な街づくりではなく、その街らしさを強調することを推奨。
- 残念だった1996年沖縄「国際都市形成構想」 1996年に沖縄県が策定した「国際都市形成構想」の良かった点と、実現できなかった点を検証。
- 沖縄を東洋一の観光リゾートにする 沖縄が持つ観光資源のポテンシャルを最大限に活かし、大胆な規制緩和や戦略を実行することで「東洋一の観光リゾート」を目指せると提唱。
- 一国二制度の作り方 「一国二制度」によって沖縄に大胆な優遇措置を設け、経済特区化することを提案。
- シンガポール の観光戦略から学べること 小国ながら観光大国として成功したシンガポールの戦略を分析し、統合型リゾート(IR)の経済効果、観光客誘致効果の大きさを強調。
- 普天間基地跡地をIRとして開発する 普天間基地跡地の活用策として、IR誘致を軸とした大規模開発構想を提案。周辺地域への経済効果や雇用創出効果の大きさを試算結果を交えて説明。
- 沖縄南北鉄道の敷設費用を国に負担させる 沖縄本島を縦断する鉄道の必要性を訴え、その財源として国の負担を提案。IRの収益や国の沖縄振興予算の活用を主張。
- 東洋一の観光リゾート地に重要なのは「空気感」 魅力的な観光地には、その土地独自の「空気感」が重要だと指摘。沖縄らしい景観や街並みを形成する必要性を訴える。
- 経済活性化は、民間事業者に任せるのが肝だ 行政は、あくまで民間企業が自由に経済活動できる環境整備に徹するべきだと主張。
- 補助金を切れば知恵が生まれる 補助金頼みの体質から脱却し、民間企業の創意工夫を生かしたビジネスモデルを構築することの重要性を説く。
第4章 沖縄ビジョンXを実現するためのケンカ道
住民投票という切り札 住民投票を政治利用することで、民意を背景に国を動かす戦略を提案。「沖縄独立」や「中国への港湾貸与」といった過激なテーマで住民投票を実施するよう促す。
沖縄県民は「怒り」をもっと政治にぶつけるべき 沖縄県民が抱える不満や怒りを、具体的な政治行動に繋げる必要性を訴える。
「沖縄独立」を問う住民投票という衝撃 沖縄県民の怒りを政治に反映させる手段として、「沖縄独立」を問う住民投票という衝撃的な提案を行う。
「沖縄独立」をちらつかせれば国は動く 「沖縄独立」の可能性を示唆することで、初めて日本政府は沖縄問題の重要性を認識し、具体的な行動を起こすと主張。
僕の大阪ケンカ道 大阪都構想、関西国際空港の再生、大阪万博誘致など、橋下氏が大阪で実践してきた「ケンカ道」の具体的事例を紹介。
橋下流「ケンカ」の極意 橋下流の「ケンカ術」の極意として、メディア戦略、世論喚起、政治交渉術などを具体的に解説。
関連リンク
橋下徹オフィシャルサイト:メディア出演情報が充実。
橋下徹チャンネル(YouTube):動画本数は少ないが、橋下氏の貴重な一面が見れる。
橋下徹 X(Twitter):フォロワー261万人超。
橋下徹(Instagram):2024年7月現在、非公開になっている。