世界を騒がす「トランプ現象」…その根底にある、橋下徹も共感する「現状打破の鉄則」とは?
2019年8月発行の「トランプに学ぶ現状打破の鉄則」(橋下徹著、株式会社プレジデント社)は、アメリカ大統領ドナルド・トランプ氏の言動を題材に、橋下氏自身の政治経験を踏まえながら、現代社会における政治のあり方やリーダーシップについて論じた一冊です。
多くの敵と戦うことを恐れない!トランプの真似をするなら覚悟せよ!
橋下氏は、自称インテリを含む既存の政治エスタブリッシュメントやメディアがトランプ氏を批判する一方で、国民の支持を集めている現状を、自称インテリと国民との乖離として捉えています。
例えば、2016年のアメリカ大統領選挙で、トランプ氏はポリティカルコレクトネスを無視した過激な発言で世界中からバッシングを浴びていました。しかし、橋下氏はそのようなトランプ氏を評価しています。なぜなら、トランプ氏はアメリカの抱える課題について本音で解決策を述べていたからです。
また、トランプ氏とヒラリー・クリントン氏のテレビ討論後に行われた世論調査で、トランプ氏は10ポイント以上の差をつけられて敗北していました。しかし、結果的にトランプ氏が勝利したことからも、自称インテリ中心の政治エスタブリッシュメントやメディアの認識と、実際の有権者の意識との間に大きなズレがあることを示唆しています。
日米同盟の矛盾…日本は「血のコスト」を払わずしてアメリカと本当の意味で向き合えるのか?
本書では、国際関係、特に日米同盟についても言及しています。橋下氏は、日本がアメリカの軍事費負担や安全保障政策に対して、十分な貢献をしていないと指摘しています。
具体的には、在日米軍駐留経費の負担割合について、日本は約75%を負担しているのに対し、ドイツは約50%、他の国では約30%にとどまっていることを挙げ、日本の負担が決して少なくないことを主張しています。
しかし、日本は憲法9条を盾に「集団的自衛権」を否定してきた歴史があり、アメリカから見れば「日本はアメリカの安全保障に貢献していない」と映ることになります。
橋下氏は、日本が今後、アメリカと本当の意味で向き合っていくためには、憲法9条の解釈を含め、自国の安全保障政策について、より主体的に議論していく必要性を示唆しています。
橋下氏とトランプ氏の共通点…それは有権者の怒りを代弁する「異端児」であること!
本書を通して、橋下氏はトランプ氏の言動を肯定的に評価する場面が多く見られます。それは、橋下氏自身も、既存の政治体制やメディアに挑戦し、有権者の怒りを代弁することで、大阪都構想などの改革を進めてきたという経験を持つからでしょう。
橋下氏は、政治家が現状を打破するためには、時にはトランプ氏のように、既存の価値観や常識にとらわれず、時には批判を恐れずに、大胆な決断や行動を起こすことが必要であると主張しています。
一方で、橋下氏自身も、過激な発言や強引な手法によって、多くの批判を浴びてきました。本書は、「トランプ現象」を単に肯定したり、擁護したりするものではなく、その言動の裏側にある政治的な戦略や駆け引き、そしてその功罪を、橋下氏自身の経験を踏まえて分析し、読者に問いかける内容となっています。
まとめ
本書は、政治に関心の高いビジネスパーソンや学生など、現代社会における政治のあり方やリーダーシップについて考えたいと考える人にとって、多くの示唆を与えてくれる本と言えるでしょう。
特に、「現状打破」を目指す政治家やリーダー、ビジネスパーソンにとっては、そのヒントとなるような考え方や行動指針が示されているため、おすすめの一冊です。
本の目次と要約
CASE 1 トランプの行動には現状打破の鉄則が詰まっている
- はじめに:トランプ現象と現状打破世界を騒がせるトランプ大統領の言動は、多くの批判を集める一方で、現状打破の力強さとして評価する声も上がっている。
- 現代社会には解決すべき課題が山積しており、従来の政治手法では対応できない状況にある。
- 大衆を惹きつけるトランプの「悪役」キャラクタートランプ大統領の過激な言動は、計算された「悪役」キャラクター戦略である。
- メディアを巧みに利用し、時に過激な発言をすることで、大衆の注目を集め、自らのメッセージを拡散させている。
- SNSは巨大メディアへの「逆襲のツール」トランプ大統領はTwitterを駆使し、既存メディアを介さない直接的な情報発信を行っている。
- これにより、メディアによる情報操作を回避し、有権者へダイレクトにメッセージを届けることが可能となる。
- 現状打破のためには「強烈な批判」と「強烈な支持」真の現状打破を目指す政治家は、強烈な批判と支持を巻き起こす必要がある。
- トランプ大統領は、自らの主張を曲げずに発信し続けることで、熱烈な支持者と強烈な反対者を明確に分けている。
- 「いい人」よりもストレートな「悪役」政治の世界には「いい人」を演じる偽善者が多く存在する。
- トランプ大統領は、自らを良く見せようとすることなく、本音をストレートに表現することで、有権者の心を掴んでいる。
CASE 2 トランプなら日韓関係の問題をどう解決するか
- 国民不在の政治へのNO!:日韓関係を軸に世界中で広がるポピュリズム現象は、既存の政治体制への不満の表れである。
- 特に日韓関係においては、慰安婦問題などをめぐり、国民不在の政治が続いている。
- 歴史認識を外交の中心に据えるべき理由外交交渉において、歴史問題は重要な要素となる。
- 北方領土問題を例に挙げ、歴史認識の対立が外交交渉の障壁となることを示す。
- 日韓合意の問題点:綺麗事だけでは現状打破はできない2015年の日韓合意は、問題の本質を解決しないまま、曖昧な表現でまとめられた。
- 現状打破のためには、歴史認識を明確に対峙させ、互いに納得できる解決策を見出す必要がある。
- 「世界中が日本を叩く構図」の打破慰安婦問題に関し、世界中で日本だけが批判される現状を打破する必要がある。
- 戦争時の女性の性被害は、日本だけでなく、世界各国が抱えていた問題であることを認識すべき。
- 世論と専門家への反論:政治家とインテリの行動原理の違い慰安婦問題に関する著者の主張は、多くの批判を浴びたが、同時に多くの支持も集めた。
- 政治家は、綺麗事を並べるのではなく、現実的な解決策を提示する必要がある。
CASE 3 なぜトランプは大批判の中で健闘できたのか
- メディアの力:トランプ対ヒラリー、そして都構想民主主義国家において、メディアは政治に大きな影響力を持つ。
- アメリカ大統領選挙や日本の選挙を例に挙げ、メディア報道が選挙結果に与える影響について論じる。
- ポリティカルコレクトネスの罠:綺麗事が本音を凌駕する時ポリティカルコレクトネスを重視するあまり、本音で議論することが難しくなっている。
- トランプ大統領は、ポリティカルコレクトネスを度外視した発言をすることで、有権者の本音と共鳴した。
- 「ポピュリズム」というレッテル:大衆迎合主義の功罪ポピュリズムは、既存の政治体制への不満を背景に台頭する。
- ポピュリズムには、大衆迎合主義という側面もある一方で、政治と有権者の乖離を浮き彫りにするという側面もある。
CASE 4 政治家に向いている人、向いていない人
- 政治家の資質:「現状維持」か「現状打破」か現状維持を望むならば、政治家に向いていない。
- 現状打破には、強い意志と行動力、そして批判に屈しない精神力が必要となる。
CASE 5 トランプ大統領と新聞・テレビのバトルをどう見るか
- トランプとメディアの戦い:緊張関係こそ健全な民主主義の証トランプ大統領とメディアは、互いに激しく批判し合っている。
- このような緊張関係は、健全な民主主義社会には必要不可欠である。
CASE 6 トランプの外交戦略を読み解く
- トランプの外交は「シンプル」で「わかりやすい」トランプ大統領の外交は、従来の外交とは異なり、シンプルでわかりやすい。
- 友好的な国と敵対的な国を明確に区別し、自国の利益を最優先に考える姿勢を明確にしている。
- 「アメリカ・ファースト」:自国の利益を最優先に考えるトランプ大統領は、「アメリカ・ファースト」を掲げ、自国の利益を最優先に外交政策を展開している。
- これにより、国際社会においてアメリカのプレゼンス低下を招く可能性もあるが、同時に国内の支持を集めている。
- 同盟国にも厳しい姿勢:軍事費負担や貿易協定トランプ大統領は、同盟国に対しても、軍事費負担や貿易協定などに関して厳しい姿勢で臨んでいる。
- これにより、同盟国との関係悪化も懸念されるが、同時に自国の利益を確保するという側面もある。
- 「敵」と「味方」を使い分ける:中国、ロシア、北朝鮮トランプ大統領は、中国、ロシア、北朝鮮といった国々に対して、「敵」と「味方」を使い分ける柔軟な姿勢を見せている。
- 時には強硬な姿勢を見せる一方で、時には歩み寄りを見せるなど、自国の利益を最大限に引き出す戦略をとっている。
- 「個」の力で外交を動かす:トップ同士の人間関係トランプ大統領は、政府間交渉だけでなく、首脳同士の個人的な信頼関係を重視している。
- 個人的な関係を築くことで、外交交渉を有利に進めようという戦略である。
終章 世界を翻弄する男の「本質」
- トランプ現象の本質:世界は「綺麗事」だけでは動かないトランプ大統領の言動は、世界を翻弄している。
- しかし、彼の言動は、国際社会におけるアメリカの地位低下や国内の政治対立など、複雑な要因が絡み合った結果であることを理解する必要がある。
関連リンク
橋下徹オフィシャルサイト:メディア出演情報が充実。
橋下徹チャンネル(YouTube):動画本数は少ないが、橋下氏の貴重な一面が見れる。
橋下徹 X(Twitter):フォロワー261万人超。
橋下徹(Instagram):2024年7月現在、非公開になっている。