政治家が書いた本をレビュー。ビジョンと熱い想いを知ろう!

「招かれざる大臣 政と官の新ルール」長妻 昭|官僚組織との闘いを赤裸々に綴った本

記事内に広告を含みます

【霞が関vs長妻大臣】官僚との壮絶な1年間の記録!『招かれざる大臣』を読み解く

民主党政権下で厚生労働大臣を務めた長妻昭氏による『招かれざる大臣 政と官の新ルール』をよみました。

2010年に発行された本書は、政治主導を掲げた民主党政権下で、官僚組織とどのように対峙し、改革を進めようとしたのか、その舞台裏を赤裸々に綴った一冊です。

2008年に出版された『闘う政治』に続く、政治家・長妻昭の素顔に迫る貴重な記録と言えるでしょう。

3万3000人の巨大組織を動かせ!~「指示待ち」の文化との格闘~

本書で印象的なのは、約3万3000人という巨大組織である厚生労働省を動かすことの難しさ、そして「指示待ち」を決め込む官僚との葛藤が随所に描かれている点です。長妻氏は、就任早々から「天下り凍結」や「独立行政法人への天下りポストの公募化」などの改革を断行しようとしますが、官僚たちは「該当者なし」というペーパーを持参したり、10月1日付の人事については「時間がない」ことを理由に強行しようとします。

さらに、長妻氏が「指示待ち」の文化に驚愕するエピソードも紹介されています。 例えば、国会で「消えた年金」問題を追及し、当時の福田康夫首相から「できる限り対応させたい」という答弁を引き出したにも関わらず、後日、担当者に確認したところ、何の調査も指示も出ていなかったというのです。このような官僚の姿勢に、長妻氏は「役所というものはトップが『あれどうなった?』と聞かないと、動かないところ」と苦言を呈しています。

国民不在の役所文化に憤怒!~「生活者の視点」を貫いた日々~

長妻氏は、官僚主導で進められてきた従来の政治ではなく、国民の声を直接聞き、「生活者の視点」を重視した政治を目指しました。 その象徴的な取り組みが、国民年金や介護保険に関する意見交換会「みんなの年金」「みんなの介護」です。これは、公募で集まった一般市民の声を直接聞くという画期的な試みでした。

また、長妻氏は、国会答弁を「国民に約束する場」と捉え、官僚が作成した答弁内容をそのまま読むのではなく、自ら考え、自分の言葉で答弁することを徹底しました。

政治主導の難しさ~「古い政治文化」との対峙~

本書では、民主党政権が掲げた「政治主導」の難しさについても言及されています。 長妻氏は、官僚との対立姿勢ばかりが強調される「政治主導」という言葉に違和感を覚え、「役所が古いルールや慣習に大臣を従わせる。そうした従来の慣習にとらわれず、大臣が主導して、役所を動かすルールや仕事のやり方を変える。これが本来の政治主導である」と定義しています。

「招かれざる大臣」からの提言~「新しい統治機構」構築へ~

長妻氏は、厚生労働大臣としての1年間の経験を通して、日本の政治が抱える課題を浮き彫りにするとともに、その解決策として「新しい統治機構」の必要性を訴えています。具体的には、国家公務員法の改正、政務三役の増員、官邸の構造改革、そして「古い政治文化」の打破などを提言しています。

おすすめポイントと読者層

本書は、政治主導の難しさ、官僚組織の体質、そして日本の政治が抱える課題と展望を、豊富なエピソードを交えながら、わかりやすく解説した一冊です。

政治という複雑な世界を、長妻氏の経験を通して垣間見ることができます。

特に、長妻氏が官僚と激論を交わしながらも、政策実現に向けて奔走する姿は、政治家としての信念と情熱を感じさせ、読者に深い感銘を与えます。 政治の世界をより身近に感じ、日本の未来について考えるきっかけを与えてくれるでしょう。

¥35(2024/12/08 01:27時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場
\商品券4%還元!/
Yahooショッピング

本の目次と要約

序章

巨大組織である厚生労働省の改革に挑んだ、著者の大臣就任から退任までの記録。銀行の合併を経験した会長との面会や、日々押し寄せる膨大な資料との格闘など、就任前の予想をはるかに超える激務ぶりを振り返る。

第1章 大臣退任の日

大臣退任の日、著者は「やり残した事はあるが、やれるだけのことはやった」と語る。官僚文化を変革すべく取り組んだ数々の改革、そして、その過程で生まれた官僚との軋轢。鳩山首相辞任の痛恨と、後任への期待を込めて、激動の1年間を振り返る。

第2章 熱狂の政権交代

2009年、民主党への政権交代は日本全国に大きなうねりとなった。国民の期待を一身に背負い、新たなルールのもとで厚生労働省の大臣として船出するまでの慌ただしい日々を描く。官僚主導から政治主導への転換、その現場で目にしたものとは?

第3章 役所文化との闘い

厚生労働省に乗り込んだ著者は、そこで霞が関の独特な文化と対峙することになる。官僚の意識改革を目指し、情報公開や業務改善、コスト意識改革など様々な施策を打ち出すも、想定外の抵抗に遭う。著者の改革への情熱と、官僚とのせめぎ合いを描く。

第4章 官僚の抵抗

厚生労働省の改革を進める中で、著者は官僚の抵抗に直面する。天下り問題、情報操作、前例踏襲主義など、根深い官僚文化の壁に突き当たる。著者の改革への強い意志と、官僚との対立が鮮明に描かれる。

第5章 政治家を志した理由

政治家を目指したきっかけは、学生時代に遡る。人間への探求心から法学を志し、企業での経験を経て政治の世界へ。田 中角 栄氏を参考に、政治家としての在り方を模索する。

第6章 民主党はどこへ向かうのか?

民主党政権の1年間を振り返り、今後の課題と展望を語る。官僚任せにせず、政治主導で改革を進める必要性を訴える。官僚機構改革の必要性、そして日本が抱える社会保障問題の解決に向けて、著者の熱い想いが語られる。

第7章 未来への提言

日本の未来を見据え、社会福祉、経済、安全保障など、様々な分野における提言を行う。「少子高齢社会を克服する日本モデル」構想、消費税増税問題、情報収集体制の強化など、具体的な政策提言がなされる。

付録

厚生労働省改革への取り組み

著者が大臣在任中に取り組んだ、厚生労働省改革の具体的な内容を紹介。人事評価制度の改革、情報公開の推進、天下り規制の強化など、多岐にわたる改革の成果と課題をまとめる。

参加型社会保障(ポジティブ・ウェルフェア)の確立に向けて

「中学校区」構想、地域福祉の充実、社会保障費の財源問題など、今後の社会保障制度のあり方について提言を行う。

平成22年度版 厚生労働白書 – あとがき

厚生労働省が作成した平成22年度版の白書を紹介。社会保障の現状と課題、今後の展望などがわかりやすくまとめられている。

関連リンク