元横浜市長が明かす!政治家生命を絶つ「政治家の殺し方」とは?
2011年に幻冬舎から出版された「政治家の殺し方」は、元横浜市長の 中田宏 氏による衝撃的な書です。タイトルからは穏やかでない印象を受けますが、本書は中田氏が政治家として過ごした10年間で経験した、想像を絶する スキャンダル や 嫌がらせ 、そして 組織との闘い を赤裸々に綴ったノンフィクション作品です。
若き市長に襲いかかる「週刊誌」という名の凶器
中田氏は37歳という若さで横浜市長に就任しました。衆議院議員を3期務めた後、財政再建を掲げて市長選に挑み、見事当選を果たします。しかし、その輝かしい未来は、ある週刊誌の登場によって一変します。
2007年、中田氏に対する 「週刊現代」(講談社) の執拗な攻撃が始まりました。ありもしない女性問題、黒い交際、果ては公金横領疑惑まで、毎週のようにでっち上げの記事が掲載され、中田氏のイメージは地に落とされました。
中田氏は名誉毀損で「週刊現代」を訴え、裁判では完全勝訴を果たします。しかし、一度植え付けられたイメージを払拭するには、あまりにも大きな傷跡が残ってしまいました。
スキャンダルの裏に蠢く「ハイエナ」たちの正体
なぜ中田氏は、これほどまでにマスコミから標的にされなければならなかったのでしょうか。本書では、その背景として、中田氏が取り組んだ 横浜市政の構造改革 が大きく影響していたと指摘します。
中田氏は市長就任後、 建設業界、公務員、風俗業界 という、これまで誰も切り込めなかった3つの巨大な利権にメスを入れました。
例えば、建設業界に対しては、それまで慣例となっていた業者との癒着を断ち切り、一般競争入札制度を導入しました。また、公務員に対しては、年間55種類もあった特殊勤務手当の見直しを行い、最終的に2種類まで削減しました。
これらの改革は、当然ながら利権を手放さなければならなくなった人々の反発を買いました。中田氏のもとには、怪文書が送りつけられたり、街宣車を回されたりと、嫌がらせが続きました。
政治家以前に「人間」として
本書では、政治の世界の闇の部分だけでなく、中田氏の家族愛も描かれています。
スキャンダルで世間から非難を浴びても、中田氏の家族は彼を信じ続けました。中田氏は、そんな家族への感謝の気持ちを決して忘れず、毎年家族で四国八十八ヶ所を巡礼するなど、家族との時間を大切にしました。
まとめ
「政治家の殺し方」は、政治の世界の真実を暴くと同時に、 私たち一人ひとりが政治に関心を持つことの大切さ を教えてくれます。
政治は、一部の人たちだけのものではありません。私たちが暮らす社会をより良くするためには、 政治への無関心 こそが、 「政治家の殺し方」 になりかねないのではないでしょうか。
本の目次と要約
第一章 「次世代のホープ」、ひと晩で「ハレンチ市長」になる
- 若さとクリーンさを武器に、史上最年少市長に就任:37歳という若さで横浜市長に就任し、「次世代のホープ」と期待された著者の輝かしい経歴を紹介する。
- 就任わずか数年で、捏造記事によるスキャンダルに見舞われる:週刊誌に掲載された、事実無根のスキャンダル記事の内容と、それによって著者が受けた社会的ダメージについて述べる。
第二章 「恥さらし市長」の汚名を着せられる
- すべては怪文書から始まった:市役所に送られてきた怪文書をきっかけに、情報操作が始まった経緯を説明する。
- 巧妙に仕組まれた情報ロンダリング:怪文書の内容が、どのようにして大手メディアに拡散し、世間の「事実」として認識されていくのか、そのメカニズムを解き明かす。
- なぜスキャンダルの餌食にされたのか:著者がスキャンダルの標的にされた理由を、横浜市の利権構造と絡めて解説する。
- 利権に群がるハイエナたち ①建設業界編:横浜市の公共事業に関わる利権と、それによって著者がどのように攻撃されたのかを具体的に述べる。
- 利権に群がるハイエナたち ②公務員編:著者が断行した公務員制度改革に対する、内部からの抵抗と、それがスキャンダルに繋がった経緯を説明する。
- 利権に群がるハイエナたち ③風俗業界編:横浜市に存在した違法風俗店を撲滅しようとしたことで、裏社会から攻撃を受けた体験談を語る。
- スキャンダルの黒幕が生き残るワケ:スキャンダルの背後にいる黒幕の存在と、彼らがなぜ権力を持ち続けるのか、その理由に迫る。
- 元横浜市長とは「親しき仲にも道理あり」の付き合い:前任市長との関係が悪化したと報じられたことについて、当時の状況を説明し、噂の真偽を明らかにする。
第三章 一連の疑惑はこうしてでっち上げられた!
- 「3000万円の慰謝料を求められた不倫騒動」:週刊誌に掲載された不倫疑惑について、その内容の矛盾点を指摘し、事実無根であることを主張する。
- 巧妙に仕組まれた情報操作の実態:捏造記事をでっち上げるための、情報操作の手口を具体的に解説する。
- 海外視察をドタキャンし、芸能人と遊び呆けていた?:海外視察をドタキャンしたと報じられた件について、その真偽を明らかにする。
- 「中田の愛人」と名乗る女性が全国ニュースに登場:記者会見を開き、著者の愛人と名乗る女性が現れたことについて、その背後関係を明らかにする。
第四章 「史上最悪の市長」に祭り上げられた人々
- なぜ任期途中で横浜市長を辞めたのか:任期満了前に市長を辞任した理由を、自身の政治信条と絡めて説明する。
- 考え抜いた末の辞任だった:辞任に至るまでの葛藤と、その決断が横浜市の未来にとって最善であったと主張する。
- なぜ私はマスコミの餌食にされたのか?:著者がマスコミから執拗な攻撃を受けた理由を、メディアの体質と絡めて分析する。
- 即日開票と翌日開票で人件費は1億2800万円も違う:選挙の即日開票をめぐる問題を通して、メディアの偏向報道の実態を暴く。
- 「職員満足度調査」でマスコミに叩かれまくる:職員満足度調査の結果に対する、マスコミの偏った報道の仕方を批判する。
- 真実に目を瞑るマスコミ報道:都合の悪い事実は無視し、スキャンダラスな報道に走るメディアの姿勢を批判する。
- 「人の不幸は蜜の味」:不幸な出来事ほど大きく取り上げる、メディアの姿勢を批判する。
- 清濁併せ呑まないと殺される:メディアの批判を恐れて、保身のために不正を見過ごす政治家の存在を指摘する。
第五章 地獄を見た男の“復讐”
- 市民の血税は何に使われているのか:地方自治体における税金の無駄遣いの実態を、具体的な事例を挙げて説明する。
- 私が嫌われる理由は性格にある:自身の性格を分析し、それが周囲との摩擦を生んでいたことを認める。
- 市長になった途端、自分勝手に変身:市長就任後、周囲から「変わってしまった」と批判されたことについて、自身の変化を振り返る。
- 死にたくなる人の気持ちがわかった市長時代:市長時代、精神的に追い詰められていた当時の心境を吐露する。
- 政治が嫌だから政治家になった:政治の世界に飛び込んだ理由と、政治家としての自身の理想を語る。
- 家族に誓いを立てた「生姜記念日」:家族とのエピソードを紹介し、プライベートな一面を垣間見せる。
- どん底に落ちると、人間の本性が透けて見える:スキャンダル報道によって、周囲の人間の本性が見えた経験を語る。
- 私のスキャンダルで酷い目に遭った人たち:スキャンダルによって、周囲の人々に迷惑をかけてしまったことへの謝罪の気持ちを述べる。
- ひっそりとこつこつと地味に暮らす日々:市長退任後の生活を紹介し、現在の心境を語る。
第六章 政治と家族を切り離してきた理由
- 家族でお遍路が家庭円満の秘訣:家族で四国八十八ヶ所巡りをした経験を通して、家族の大切さを再認識する。
- 我が家はいまでも珍しい「昭和の家族」:自身の家族観について語り、現代社会における家族のあり方を考える。
- 私を見守ってくれた父と母の存在:両親への感謝の気持ちを述べ、自身の生い立ちを振り返る。
第七章 次世代に対してやるべきことがある
- どんな国を目指すのか:日本の未来に対する自身のビジョンを語り、政治家としての決意を表明する。
- あとがき:本書を執筆した思いを改めて述べ、読者へのメッセージを込める。