地方創生、選挙、そして政策… 石破茂が語る政治家の真髄とは?
2018年に刊行された「政策至上主義」は、政治家・石破茂氏が自身の政治信条である「政策至上主義」に基づき、政治のあり方や政策論を展開する一冊です。地方創生、選挙制度、安全保障など、多岐にわたるテーマについて、自身の経験談や具体的なエピソードを交えながら語られています。
3つの衝撃が浮き彫りにする、日本が直面する現実
石破氏は、1986年の初当選以来、ソ連崩壊、アメリカ同時多発テロ、東日本大震災という3つの衝撃を目の当たりにしてきました。これらの出来事を通じて、日本が置かれている状況は大きく変化し、もはやアメリカ一国に安全保障を依存する時代は終わり、経済成長も従来の延長線上では望めないという「現実」を突きつけられたと言います。
データに基づく丁寧な説明こそが、政治の原点
では、この厳しい現実を前に、政治はどうあるべきなのでしょうか? 石破氏は、「丁寧に説明すれば国民は理解してくれる」という信念のもと、様々な政策課題に取り組んできた経験を語ります。例えば、消費税導入や自衛隊のイラク派遣など、国民の意見が分かれる問題についても、自ら街頭に立ち、その意義を訴え続けました。
政治の根幹をなすのは、「国民と向き合い、データに基づいた丁寧な説明を尽くすこと」と石破氏は主張します。
選挙必勝の秘訣は、日頃からの地道な活動にあり
石破氏がもう一つ重要視するのが「選挙」です。政治家にとって選挙で勝つことは、自らの政策を実現するために不可欠です。
田中の選挙戦略を間近で経験した石破氏は、選挙に強い組織づくりの必要性を痛感し、自民党幹事長時代に「選挙必勝塾」を開設しました。この塾では、新人議員に対し、日頃から有権者と接点を持ち続けることの重要性を説き、きめ細やかな選挙対策を伝授したのです。
政策を磨き、議論を尽くす「水月会」という挑戦
本書刊行時、石破氏は、「水月会」という政策集団を率いていました。このグループは、単なる派閥ではなく、政策本位で議論を深め、政策提言を行うことを目的としていました。メンバー全員が執筆に参加した本書は、まさに「政策至上主義」を体現するものであり、水月会の政策力の一端を垣間見ることができます。
なお、水月会は、2021年12月に、組織形態を「派閥」から「議員グループ」に変更しています。
まとめ
本書は、石破氏の政治家としての歩みと、その根底にある「政策至上主義」という信念を理解する上で格好のテキストと言えるでしょう。特に、政治に関心の高い方、これからの日本を担う若い世代に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
石破氏の言葉は、時に耳が痛いものもありますが、それは、私たち国民一人一人に、日本の未来について真剣に考えることを突きつけているからではないでしょうか。
本の目次と要約
はじめに
日本は、約50年ごとに国家を大きく変革し、成功させてきた。明治維新、敗戦からの復興と高度経済成長、そして今、日本は岐路に立っている。本書では、政治家として30年以上、日本の舵取りに関わってきた著者が、政治の根源的な役割、そして国民一人一人の幸せの実現に向けた具体的な政策について、自身の経験をもとに熱く語る。
1 誠実さ、謙虚さ、正直さを忘れてはならない
自民党への逆風、そして民主党政権の誕生は、国民の政治不信がもたらした結果である。政治家にとって最も大切なのは、国民に対して誠実であること、そして謙虚に耳を傾け、正直に説明することである。具体的なエピソードを交えながら、政治と国民の信頼関係の重要性を説く。
2 信じる政策を正面から問うことが求められている
政治家は、選挙に勝つためだけの「イメージ先行」の政策ではなく、真に国民のために必要だと信じる政策を正面から問うことが求められている。安保法制における集団的自衛権の行使容認問題を例に挙げ、自身の考えを明確に示し、国民に対する丁寧な説明責任の重要性を訴える。
3 丁寧に説明すれば国民は理解してくれる
沖縄の米軍基地問題や尖閣諸島問題、北朝鮮の脅威といった安全保障上の問題についても、丁寧な説明が不可欠である。難しい問題であればこそ、政府は、国民の不安を払拭し、理解と協力を得るために、あらゆる努力を惜しんではならない。マスコミとの関係についても言及し、国民への説明責任を果たすための方法を考察する。
4 本気で国民の命を守るための議論が求められている
北朝鮮のミサイル発射に対するJアラートの運用や、核兵器保有の是非など、国民の命を守るためには、現実的な議論が必要である。政治家として、自らの経験をもとに、国民の安全を守るための具体的な政策を提言する。
5 国会で本質的な議論をするためには与党の努力が必要である
国会は、国民の負託を受けた代表が集まり、国のかたちを議論する最高機関である。しかし、現実には、建設的な議論よりも、政局やスキャンダル報道が先行する場面も少なくない。国会がその機能を十分に発揮し、国民の期待に応えるためには、与党側の意識改革と具体的な制度改革が必要である。
6 不利益の分配を脱し自由な選択で幸せを実現する
政治の役割は、国民に「果実」を分配することではなく、一人一人が自由に選択し、幸せを実現できる社会をつくることである。アベノミクスの成果と課題を検証し、少子高齢化や人口減少といった日本の構造的な問題を克服するために、自由な選択を可能にする政策の必要性を訴える。
7 選挙で勝つ体制が長期ビジョンを支える
政治は、選挙で勝利し、政権を担うことによって初めて実現される。長期的な国家ビジョンを実現するためには、選挙に強く、国民の負託に応え続けることができる体制づくりが不可欠となる。自身の政治家としての歩みを振り返りながら、選挙に対する考え方を語る。
8 何よりも磨くべきは政策である
政治家にとって最も重要なのは、政策力である。水月会(石破派)の活動を紹介し、政策本位の政治の実現に向けて、自由闊達な議論を重視する姿勢を示す。社会保障制度改革や教育改革など、具体的な政策課題についても、持論を展開する。
おわりに
政治家は、国民のために何ができるのか。その原点を問い直し、国民一人一人の声に耳を傾け、真摯に政策実現に取り組む決意を表明する。
関連リンク
石破しげるオフィシャルサイト:プロフィールに注目!70年代のアイドルが好き。
イシバチャンネル:趣味についても語っており、石破氏の人となりが分かる。
石破茂オフィシャルブログ:週1回のペースで書かれており、読み応えのあるブログ。
石破茂 X(Twitter):フォロワーは20万人を超えるが、更新頻度は少なめ。
石破茂 Instagram:石破氏の政治活動が写真で楽しめる。