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「国難 政治に幻想はいらない」石破 茂|小選挙区制度や集団的自衛権を解説した本

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政治家 石破茂が語る「国難」と日本の未来とは?

「このままでは、間違いなく国は滅びる」

衝撃的な言葉から始まる本書『国難 政治に幻想はいらない』(新潮社)は、2016年に発刊されました。著者は、防衛庁長官や防衛大臣を歴任し、自民党幹事長も務めた石破茂氏です。政治家人生30年の経験とそこから得た教訓を元に、日本の現状と未来について、歯に衣着せぬ語り口で、読者に問いかけます。

20年前の危機感は現実のものに

石破氏は1996年に、日本の将来を危惧する言葉を雑誌のコラムに寄稿していました。それから20年が経ち、8歳と5歳だった娘たちも成人したものの、当時の危機感は現実のものとなりつつあると石破氏は言います。年金問題、原発事故、国の借金問題など、当時よりも状況は深刻化しているというのです。

小選挙区制度導入の光と影

石破氏は、政治改革の目玉として導入された小選挙区制度について、その功罪を分析しています。政治腐敗の原因とされてきた政・官・財の癒着を壊すという点では有効だったとしつつも、一方で、政党が理念に基づいた政策を掲げ、国民にわかりやすく提示するという、制度本来の機能が果たせていない点を指摘しています。

特に、民主党政権時代の混乱ぶりを間近で見てきた石破氏は、政党が理念や綱領を持たずに、人気取りの政策ばかりを掲げることの危険性を訴えます。石破氏自身も、小沢一郎氏率いる政党と行動を共にした経験を持ちますが、小選挙区制度導入にあたって必要な前提条件が整っていなかったことを痛感したと語っています。

マスコミとの向き合い方、政治家のあり方

石破氏は、政治家にとって重要な要素として、マスコミ対策と情報収集能力を挙げています。防衛庁長官時代には、自衛隊のイラク派遣について、積極的にメディア対応を行った経験を明かしています。そして、都合の良い時だけ耳触りの良いことを言う政治家ではなく、国民のために真実を語るべきだと主張しています。

国防、外交、そして政治の在り方

石破氏は、日本が真の独立主権国家になるためには、憲法に軍隊の規定が不可欠だと主張しています。外交においても、アメリカ一辺倒ではなく、アジア諸国との関係強化の必要性を訴え、集団的自衛権の行使についても積極的に検討すべきだと述べています。

また、政治家として重要なのは、信念に基づいた行動力だと石破氏は言います。そのためにも、様々な分野の専門家と意見交換し、常に学び続ける姿勢が重要だと強調しています。

震災からの教訓、そして未来へ向けて

東日本大震災では、自民党が野党であったにもかかわらず、被災地のために奔走した経験が語られています。震災は、日本が抱える様々な問題を浮き彫りにしたと同時に、国民一人ひとりが国家について真剣に考える機会になったと石破氏は述べています。

まとめ

石破氏の政治家としての信念や、国を憂う気持ちが伝わってくる本でした。小選挙区制度や集団的自衛権など、専門的なテーマについてもわかりやすく解説されており、政治に詳しくない人でも理解しやすいと感じました。

本書は、政治に関心の薄い人でも、石破氏の率直な語り口と具体的なエピソードを通して、日本の現状と未来について考えさせられる内容となっています。特に、若者世代が、自分たちの未来を真剣に考えるきっかけとなる一冊となるでしょう。政治に興味がある人はもちろん、そうでない人にもぜひ手に取っていただきたい書籍です。

本の目次と要約

文庫版に寄せて

2014年12月の総選挙で自民党は圧勝し、政権維持となりました。しかし、著者は国民の期待と政治の現状に大きな乖離があることを危惧し、本書で日本の現状と未来への提言を行っています。

I 政治は、なぜ変わらなかったのか

この章では、著者が政治家としての原点と、政治改革への思いを語っています。特に、中選挙区制の問題点と小選挙区制導入の必要性を自身の経験を通して訴えています。しかし、小選挙区制導入後も政治は変わらなかった。なぜなら、政党が理念に基づいた政策を掲げず、国民不在の政治を続けているからだと指摘しています。

  • 中選挙区時代の経験から小選挙区制導入を志すに至るまで
  • 理念なき政党、政策論争なき選挙の実態
  • メディア戦略の重要性と政治家の情報発信能力の必要性

II 日本を、どう守るのか

この章では、日本の安全保障について、憲法、自衛隊、日米同盟などをテーマに、著者の考えを述べています。特に、憲法9条と自衛隊の関係、文民統制のあり方、日米同盟の今後など、重要な論点を提起し、具体的な事例を交えながら解説しています。

  • 真の独立主権国家とは何か?
  • 自衛官の言論の自由と責任
  • 文民統制のあり方と政治家の責任
  • 防衛事務次官の逮捕と政治とのかかわり
  • 防衛力整備と予算、組織のあり方
  • 海上自衛隊の事故対応における問題点
  • 防衛省改革会議と政治主導のあり方
  • 集団的自衛権行使の是非と憲法との関係
  • 国際平和協力法成立までの道のり
  • 日米同盟の現状と課題
  • 北朝鮮の脅威と拉致問題
  • 中国の台頭と尖閣諸島問題
  • これからの安全保障政策のあり方

III 自民党は、なぜ下野したのか

この章では、自民党が下野した原因を分析し、その責任について言及しています。郵政選挙における地方の空気、首相同様に見られる自民党の情報発信能力の欠如、高齢者医療制度をめぐる混乱など、具体的な事例を挙げながら、自民党の失政を批判しています。

  • 郵政選挙における自民党の勝利の盲点
  • 情報発信の重要性とメディア戦略の失敗
  • 政策の中身よりも説明不足が目立った「後期高齢者医療制度」
  • 過疎地の現状と自民党への失望
  • 派閥政治の功罪
  • 官邸の機能不全

IV 政治家は、何を語るべきか

最終章では、これからの政治家に求められること、そして、著者が政治家として実現を目指す未来について語っています。情報過多の現代社会において、政治家は勇気と真心を持って真実を語り、国民と向き合う必要があると主張しています。

  • 政治家としての信念と「納得のいく理解」
  • 政策実現のために必要なプロセス
  • 政治主導のあり方と官僚との関係
  • 東日本大震災の教訓と政治の責任
  • 政治不信の根底にあるもの
  • 少子高齢化社会における政治の役割
  • 政治家として未来に向けて何を語るべきか
  • 政治家としての決意

文庫版あとがき

文庫版あとがきでは、本書刊行後の政治状況の変化や、著者が取り組んでいる地方創生について触れ、改めて、政治の安定と国民の未来のために全力を尽くす決意を表明しています。

関連リンク

石破しげるオフィシャルサイト:プロフィールに注目!70年代のアイドルが好き。

イシバチャンネル:趣味についても語っており、石破氏の人となりが分かる。

石破茂オフィシャルブログ:週1回のペースで書かれており、読み応えのあるブログ。

石破茂 X(Twitter):フォロワーは20万人を超えるが、更新頻度は少なめ。

石破茂 Instagram:石破氏の政治活動が写真で楽しめる。