政治家が書いた本をレビュー。ビジョンと熱い想いを知ろう!

「なっちゃんの挑戦 元気な東京 元気な日本」山口那津男|医・職・住の整備について提言する本

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政治家としての原点と未来へのビジョンを語る

山口那津男氏の著書「なっちゃんの挑戦 元気な東京 元気な日本」を読みました。

2000年12月8日に初版発行された本書は、著者の山口那津男氏が政治家としての原点と未来へのビジョンを語った一冊です。山口氏が弁護士時代に直面した社会問題や、政治家として取り組んできた国際貢献、そして未来の日本社会への提言が、具体的なエピソードを交えながら展開されています。

特に印象的なのは、読者を引き込むような「なつお物語」と題された章です。ここでは、山口氏が実際に体験した出来事を通して、教育問題、家庭内暴力、暴力団問題など、日本社会の様々な課題が浮き彫りにされます。

「すべては一人のために」 弁護士時代の経験から学んだこと

第二章「すべては一人のために」では、山口氏が弁護士として活動した1980年代の日本社会が舞台となっています。当時は、高度経済成長の波に乗り、物質的には豊かになりつつありましたが、その一方で、様々な歪みも生じていました。山口氏は、そうした時代背景の中で、家庭内暴力や児童虐待、貧困など、社会的に弱い立場に置かれた人々の問題に数多く向き合ってきました。

特に印象的なのは、DV被害に苦しむ母子の力になったエピソードです。夫の暴力から逃れるため、幼い子供を連れて家を出た女性からの依頼を受け、山口氏は親身になってサポートしました。しかし、調停は難航し、女性は夫との復縁を望んでいました。

数年後、街中で偶然出会った青年から「あの節はありがとうございました」と声をかけられました。彼は、当時幼かった息子で、母親は再婚して幸せに暮らしていると聞き、山口氏は弁護士として、そして人として大きな喜びを感じます。このように、困難な状況に立ち向かう人々と、親身になって寄り添う山口氏の姿が鮮やかに描かれています。

「地球サイズの行動」 国際貢献への思いと、その原点

第三章「地球サイズの行動」では、政治家として国際貢献に力を注ぐ山口氏の活動が紹介されています。1990年、イラクによるクウェート侵攻という未曾有の事態が発生し、国際社会は大きく揺れました。日本政府は、国連を中心とした外交を掲げていましたが、国際貢献のあり方について、国内では様々な意見が飛び交っていました。

そんな中、山口氏は自費でクウェートを訪問し、現地の状況を目の当たりにします。特に、油田火災による黒煙は想像を絶するものでした。クウェートの人々が本当に求めているものは何か、それはお金ではなく、油田火災を消火し、黒煙を取り除く技術と人材でした。

この経験を通して、山口氏は日本の国際貢献のあり方について深く考えさせられます。そして、資金協力だけでなく、日本の技術と人材を活かした「顔の見える国際貢献」の必要性を強く訴えます。

「輝く21世紀のビジョン」 少子化、高齢化、雇用問題…未来の日本への提言

第四章「輝く21世紀のビジョン」では、少子高齢化、雇用問題、都市と地方の格差など、日本社会が直面する様々な課題を取り上げ、未来への提言を行っています。

山口氏は、これらの課題解決には、「衣・食・住」ではなく、「医・職・住」という視点が重要だと説きます。「医」とは、人々が安心して医療を受けられる体制の確立です。「職」とは、誰もが生きがいを持って働ける社会の実現です。そして、「住」とは、安全で快適な住環境の整備です。

これらの実現に向け、山口氏は具体的な政策を提案しています。例えば、少子化対策としては、子育て支援の充実や、女性が働きやすい環境づくりなどを提言しています。また、高齢化社会への対応としては、地域医療の充実や介護サービスの拡充などを訴えています。

「未来を創る子どもたちのために」 教育の現状と未来への提言

第五章「未来を創る子どもたちのために」では、教育問題をテーマに、静岡大学教授の馬居政幸氏との対談形式で議論が進められます。

対談では、戦後の日本社会における教育の変遷を振り返りながら、現在の教育制度が抱える問題点について分析しています。 特に、受験中心の教育システムや、画一的な評価基準などが、子供たちの個性や多様性を奪っていると指摘しています。

そして、未来の社会を担う子どもたちのために、真の「ゆとり」と「生きる力」を育む教育の必要性を訴えます。

まとめ

「なつちゃんの挑戦」は、山口氏の政治家としての原点と、未来へのビジョンが明確に示された一冊です。

具体的なエピソードやデータが豊富に盛り込まれているため、政治に関心の薄い人でも読みやすく、日本の現状と未来について考えるきっかけを与えてくれます。

特に、社会問題や政治に関心のある方、教育関係者、そして未来の日本社会を担う若者世代に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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本の目次と要約

第1章 未来をつくる子どもたちのために(上)

  • はじめに: 新世紀を迎え、経済の低迷、社会保障の不安、教育の問題など、多くの人々が将来に不安を抱いている現状を指摘し、解決策を探求する必要性を提示する。
  • 「公の子」という発想: 少子化問題の根底には、子どもを「私の子」と捉える個人主義的な価値観があると指摘。社会全体で子どもを育てる「公の子」という発想の転換を提案する。
  • 仕事と子育ての両立: 仕事と子育ての両立が困難な現状を、諸外国との比較を交えながら分析。男性の育児参加の少なさや、女性の就業構造の問題点を指摘する。
  • 女性の社会進出と少子化: 女性の社会進出と少子化の関係性について考察。女性の就労支援を進めつつ、結婚・出産・育児に対する支援制度の充実が不可欠であると主張する。
  • 育児休業制度の現状と課題: 育児休業制度の利用促進には、企業側の意識改革や経済的支援が重要であると指摘。補助金制度などを活用し、男性も利用しやすい環境作りを訴える。

第2章 すべては一人のために

  • はじめに: 政治家としての原点は弁護士時代に経験した「人の心の痛みを感じること」「真心 を尽くすこと」 だと述懐し、様々な人々との出会いを紹介する。
  • なつお物語2:母子の未来を守れ: DV被害に遭った母子の支援を通して、社会の歪みや不条理、そして人として守るべきものについて考えさせられる事例を紹介する。
  • なつお物語3:暴力団が町工場にやってくる: 暴力団が介入した破産寸前の町工場の再建に奔走した経験談。法律の専門家としての知識や経験を生かし、事態の収拾に尽力した。
  • なつお物語4:「白い粉」を常習する女性: 薬物依存に苦しむ女性とその家族の支援活動を通して、人の心の温かさと、更生への道のりの厳しさを実感した体験を紹介する。

第3章 地球サイズの行動

  • 突然の侵略: 湾岸戦争勃発時、自衛隊派遣問題に揺れる日本政府の対応を批判。平和国家としてのあり方、国際貢献のあり方について、自らの考えを述べる。
  • 重大な岐路: PKO協力法案をめぐる国会での論戦の様子を振り返り、自衛隊の海外派遣における憲法上の問題点や、政府の曖昧な姿勢を批判する。
  • “超法規的措置”: ペルー日本大使公邸占拠事件における人質解放のために、政府が“超法規的措置”をとるべきだと主張。人命最優先の立場から、政治の決断を迫る。
  • 自費でクウェートへ: 湾岸戦争後のクウェートを自費で訪問し、戦争の爪痕を目の当たりにした経験を語る。国際社会の一員としての責任を果たすため、積極的な平和構築支援の必要性を訴える。
  • 黒煙につつまれた街: カンボジア内戦の悲劇を目の当たりにし、国際社会の無関心を痛感。平和構築のためには、政治・経済・教育など、多岐にわたる支援が必要であると訴える。
  • 百の議論より一つの行動: 東南アジア歴訪を通して、平和構築には現場主義の姿勢が重要であると実感。日本は経済援助だけでなく、人的貢献も積極的に行うべきだと主張する。
  • アジアの平和、国際貢献の道をひらく: アジアの平和と安定のために、日本は積極的な役割を果たすべきだと主張。ODAやPKOなど、具体的な取り組みについて提言する。

第4章 輝く21世紀のビジョン

  • 「衣・食・住」から「医・職・住」へ: 21世紀の豊かさを実現するために、「衣・食・住」に加え、「医・職・住」の充実が不可欠であると提唱する。
  • 「医」の課題: 少子化による小児医療の危機、新型健康危険物質への対応、高齢化社会における医療体制の充実など、「医」に関する課題を具体的に挙げ、解決策を提示する。
  • 「職」の課題: IT革命による雇用環境の変化、失業問題の深刻化、労働者の不安や不満の高まりなどを踏まえ、「職」に関する課題を分析し、具体的な政策提言を行う。
  • 「住」の課題: 高齢化社会における住宅問題、都市環境の整備、多摩地域の将来像などを展望し、安全・安心で快適な「住」環境の実現に向けた具体的な政策を提言する。

第5章 未来をつくる子どもたちのために(下)

  • <対談>少子社会の可能性を求めて: 静岡大学教授の馬居政幸氏と少子化問題、教育問題を中心に語り合う。
  • 出生率の二つ の山と谷: 日本の出生率の推移をグラフで示し、それぞれの時代の社会状況と少子化の原因を分析する。
  • 進学率の変化: 戦後の高度経済成長期における進学率の上昇と、その後の変化について解説。学歴社会の功罪、受験競争の激化、教育格差の拡大など、様々な問題点を指摘する。
  • 少子化時代の家族像: 少子化によって変化する家族像について考察。晩婚化・非婚化の増加、一人っ子家庭の増加、地域社会とのつながりの希薄化など、様々な問題点を指摘する。
  • これからの政策課題: 少子化問題解決に向けた政策課題について議論。子育て支援、教育改革、地域社会の再生など、多岐にわたる視点から提言を行う。

関連リンク

山口那津男オフィシャルサイト:山口なつお物語は必見。

山口なつおチャンネル(YouTube):32本しか動画がない。休止中?

山口なつお X(Twitter):更新頻度は少なめ。公明党のリポストが中心。