国家滅亡の危機に気づいていない日本国民
青山繁晴氏の著書「日中の興亡2025」(2019年 出版)を読みました。
「日中の興亡2025」は、作家であり、現職の参議院議員でもある青山繁晴氏によって書かれた本です。
2008年に書かれた「日中の興亡」に大幅に加筆修正を行い、新書化されました。
日本と中国との関係に焦点を当て、歴史、地政学、経済、安全保障など多角的な視点から分析したこの本。青山氏が、真剣に主張するのは、「日本国民は危機に気づいていない」ということです。
そして、このままでは、
政治と経済は中国、
エネルギーはロシアとアメリカ
安全保障はアメリカ
のそれぞれ属国になってしまうと警告しています。
たしかに「中国との摩擦」は、毎日のようにニュースになっています。
摩擦といっても、一方的に日本が攻められているように見えます。
尖閣諸島、福島原発の処理水、靖国問題、日本大使館への嫌がらせ電話、反日デモなど、ありとあらゆることで、日本を貶めているように思えてなりません。
中国が日本を狙う理由は?
それは「日本が隠れた資源大国だから」と、青山氏は指摘しています。
日本は隠れた資源大国

「えっ?日本は資源小国なんじゃないの?」と思いましたが、事実は逆。
実は1968年から1970年にかけて、国連が日本の領土である尖閣諸島周辺の海底を調査。
その結果、未知の石油と天然ガスが埋蔵されているとの報告が発表されました。
それに目をつけた中国は、1971年に尖閣諸島の領有権を主張。
現在まで、海底の調査と試掘を続けています。
しかも、中国大陸から発した大陸棚が続く範囲はすべて中国のEEZ(排他的経済水域)だと主張。
このままでは、尖閣諸島どころか、沖縄近海までも中国のものとなってしまいます。
さらに現在では、次世代エネルギーとして期待されるメタンハイドレートも日本の領海とEEZに大量に存在することが明らかになってきています。
私は不勉強にも、日本は資源小国だと思い込んでいたので、青山氏の主張には本当に驚きました。
領土拡張を狙う中国
中国は「多すぎる民をどうやって食べさせていくのか」という不安を抱えていると青山氏は主張します。
人口を養うために欠かせないのは、食料と資源エネルギー。
そのため、中国は侵略を続け、領土拡張を狙っていると青山氏は主張しています。
1949年、内戦を経て、中国共産党が統一政権を樹立した中国。
翌年の1950年には、西のチベットへ侵攻し、1959年にはチベットを併合します。
現在はチベット自治区、もしくは西藏自治区と呼ばれています。
同じ年の1959年、今度はインドとの戦争をはじめた中国。
1962年にシッキム地方をインドから奪います。
西の脅威は消えたと判断した中国は、次に北方の旧ソ連に攻め込みます。
これが「中ソ国境紛争」です。
中国はモンゴルの半分を奪って、「内蒙古自治区」としています。
それ以外のモンゴルはソ連の衛星国になっていますが、だからといって内蒙古を削り取りに来るなというメッセージのため、旧ソ連に攻め込んだというのです。
西のチベットとインド、北の旧ソ連に進出した中国は、次に南のベトナムを攻めます。
これが、1979年の「中越戦争」です。
ベトナムは本土を守ることはできましたが、海の島「南沙諸島(スプラトリー諸島」)」は奪われてしまいました。
これは、海洋資源・海底資源に着目していたためだと、青山氏は説きます。
西・北・南を攻めた中国。次に攻めるのは東だ。

1949年に建国した中国は、1950年のチベット侵攻から、南沙諸島を奪った1988年まで侵略し続けます。
しかし、東に位置する日本には、おいそれと戦争を仕掛けるわけにはいきません。
在日米軍がいるためです。
そこで、まずは尖閣諸島を領有宣言したというのが、青山氏の主張です。
韓国が竹島を自国領土だと主張するのも同様です。
日本海にもメタンハイドレートが大量にあるため、竹島および日本海を狙っているのです。
1952年、竹島周辺で漁をする漁船を韓国は銃撃。日本人の漁民が殺害されたという痛ましい事件がありました.
竹島をめぐる資料は、島根県のウェブサイトが詳しいです。
「尖閣諸島や竹島なぞ、渡してしまえ」という専門家や評論家がいますが、青山氏の本を読んで大きな間違いであることが理解できました。
また、小泉政権だった2004年の夏、当時の中川昭一経済産業大臣が、尖閣諸島の資源調査を行ったそうです。
すると、その年の秋、中国海軍の原潜が尖閣諸島の領域を侵すという事件がありました。
「故意ではない。計器の故障だ」と釈明したそうですが、青山氏の見立ては違います。
領有宣言だけではなく、海軍力を行使することもあるとのアピールだと青山氏は見ています。
軍事力なき外交の無力さ

青山氏は、中国の脅威に対抗するためには、軍事力の裏付けが不可欠だと主張します。
中国は、尖閣諸島問題などにおいて、その軍事力を背景に日本に圧力をかけつづけています。
一方、日本は憲法9条の制約により、自衛のための十分な軍事力を持つことができません。
青山氏は、自衛隊がより積極的に国民の安全を守る役割を担えるよう、憲法改正を含めた抜本的な改革が必要だと訴えます。
国際司法裁判所に訴えるのも不可能。
当事国同士が合意しないと裁判できない仕組みになっているためです。
尖閣諸島・北方領土・竹島。
中国、ロシア、韓国、北朝鮮の隣国からは、軍事力で圧力をかけ続けられている現状。
それなのに、日本は憲法9条にこだわり続けています。
憲法にこだわり続けて自衛できないのであれば、本末転倒だと感じます。
「日中の興亡2025」読書後の感想
この記事を書いているのは2024年9月18日には、中国・深センの日本人学校で男児が刃物で襲撃されるという痛ましい事件もありました。
(追記)19日、亡くなられたと報道がありました。残念でなりません。
中国では2024年6月にも江蘇省蘇州でも6月に日本人の母子が切り付けられる事件が起きたばかりです。
政治でも国民感情でも、中国は日本に対してエスカレートしつつあります。
このように緊張感が高まる中、「日中の興亡2025」は、国際情勢や安全保障に関心の高い読者にとって、多くの示唆を与えてくれる本だと言えます。 日本の置かれた立場を冷静に分析し、具体的な政策提言を行っており、大変勉強になりました。
青山氏は「聖徳太子の時代のように、卑屈になったり、へりくだることなく対等に接することが重要」と説きます。
ぜひご一読をおすすめします。
最後に、「日中の興亡2025」で学んだポイントをまとめておきます。
・日本の周りは、大量の資源が眠っている。特にメタンハイドレート。
・中国が尖閣諸島を狙うのは、大量の資源が目的
・日本は「中国、ロシア、アメリカ」の属国となる危機にある
・中国は建国以来、「西・北・南」を攻めている
・東の日本を攻めてこないのは、在日米軍のおかげ
・軍事力を持たなければ、対等な外交はできない
本の目次と要約
始まりの章 滅びの門
第二の章 中華思想という幻は終わらない
日本が資源小国であるという思い込み
中国側の魂胆を見抜いていた政治家
利益集団には不都合だった安倍首相
現代版・中華思想を理解せよ
中国の台頭は、日本のチャンス
世界で唯一、侵略戦争を続ける国は?
これが答えだ!
最大のハンデを最大の強みに変えた
第三の章 中国は次は東にすすむ
中国は負け戦をしない
勝ち戦で西、南、北へ侵略した
日本に欠けた思考を得意とする中国
中国が攻めなかった方角
中国が東側に食指を伸ばした理由
だから中国は尖閣諸島を欲しがっている
「これではCIAも情報を取れない」
第四の章 中国が狙っている「第四の資源」
問題を棚上げにした外務省
日中はアリとキリギリス
本当に資源はないのか
韓国が東海と呼ぶ理由
「第四の資源」が日本を救う
既得権益を失うから反対している
五〇〇億はトライ・アンド・エラーに必要だつた
かくて日本は資源大国に生まれ変わる
第五の章 軍事なき外交は無力である
これが中国原潜事件の真相だ
江沢民が「反日」となった理由
反日暴動の際、中国首相は何をしていたか
不思議な国の不思議な米軍
守られなかった中国共産党の指示
「一人っ子政策」の落とし穴
外務省ではなく官邸が協議を
当面、日中戦争が起きない理由
日本は最初から負けていた
軍事なき外交は無力
「北方領土」と呼ぶから間違える
国際司法裁判所が機能しない理由
文字通り、国民のための自衛隊
国民保護法を考える
日本国民の知らない自衛隊の戦力
自衛隊は中国には負けない
軍隊が軍隊である条件
日本防衛上の愚かしい欠点
これでは対症療法だ
第六の章 「円」こそ、国際通貨である
エコノミストが予測を外した理由
真の問題は円だ
国民経済なのだからトータルに
速水総裁は最初から失格だった
円安を引き起こした福井スキャンダル
「人民元」には二重のうそがある
円を国際決済通貨に
「早く中国に崩壊してほしい」
対中投資は儲かつていない
関西経済同友会の画期的な提言
第七の章 二〇一〇年、東アジアは激動する
北の核開発を促進した六カ国協議
北朝鮮の核が「使える核」になる
韓国が反日に転じた理由
もはや韓国も中国の影響下に入った
インドとの連携を
北朝鮮経済は崩壊する
胡錦濤は北朝鮮が大嫌い
北京オリンピツクと上海万博の背景にあったもの
核実験とミサイル実験はセットだった
金正日総書記が金日成を暗殺した
南京大虐殺の次に出てくる中国のカード
東アジア共同体構想への疑問
第八の章 これが日中謀略戦の実態だ
これが中国のハニー・トラップ・リストだ
本当の「価値の外交」を
あるフランス当局者が明かした話
米国防総省が用意した亡命先
やがてアジアに大雨が降る
フランスは中国に空母を売りたい
米中関係は変化する
わたしの家系まで知っていた中国軍大佐
これが中国の狙いだ
沖縄で女学生の遺骨を眼にした衝撃
これがわたしの原点だ
沖縄を守り抜くのが日本国民の義務だ
ローマ法王が語った愛国心
第九の章 日本がすべきこと
カンボジアの最大の悲劇
日本が忘れ、中国が忘れない国
日本はお金を渡すだけでよいのか
日本国民ひとりひとりが考えよ
終わりの章 希望の門
日本族とは永遠に呼ばせない
関連リンク
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